07


「なまえそれ本気で言ってんのか!?」
「もしかして箱入り娘だったりするのかしら…」
「それにしても今この大海賊時代に海を見た事がないっていうのは……」


驚愕した視線と、哀れみの視線を向けられる。

そもそも大海賊時代とは、という質問は出来ない。何となく分かってきたことだ。ここが私のいた所とは違うってことは。そういう時代もあるんだって、ただ、まだ目を逸らしているだけで。

「初めてって言っても写真や絵では見た事あったよ…?ただ実物を見るのは初めてだってだけで」
「そういう問題か?」

雄英近くの海岸はゴミ捨て場と化していて、それも新聞などで見ただけで。
行く友達も家族もいたわけじゃない。無縁だったのだ。


「なまえ!」
「?」
「海はどうだ!!?」


いつのまにかこの船のシンボルの羊の船首の上に座っているルフィさん。
麦わら帽子を抑えて笑う彼は眩しくて、太陽の光に照らされてる彼はとても海が似合っていた。


「青いよ」

「え?」
「こんなに青くて綺麗だなんて知らなかった。こんなに広いなんて知らなかった。先が見えなくて、どこまでも続いてそうでその海を走るこの船はなんて自由なんだろうって」


知らなかったのだ。
少し、ほんの少しだけ。自分の抱えてる事はこの海に比べたらどれほど、ちっぽけなことなんだろう……そう思ってしまうぐらいに。


「こっちこいなまえ!」
「え!あ、うわぁ!」
「くそゴム!なまえちゃんは丁重に扱え!」


船首から伸びてきた腕に引っ張られて、ルフィさんの胡座の上に座る。ちょっとこの状況が中々理解できなくてい、今腕伸びた!?伸びたよね……?それって個性…!?

「ルフィさ、ん!今腕が……!」
「ししし!なまえ!よく聞け!!」


ルフィさんの方を向いていた顔の両頬をぱちんっと抑えられ、ぐりんと一面まっさらな海の方へ向けられる。


「りゅ、ひ、ひゃん…!」

「この海で!!!自由なのが海賊で!!!


一番自由なのが海賊王だ!!!」


その言葉に呆けていると同じようにぐりんっ!と今度はルフィさんに顔を向けられる。

少しでも動いたら鼻がくっつきそうなほど近いルフィさんは、なぜか見てるこっちが泣きたくなるほどの眩しい笑みで言葉を零した。


「そんでおれは一番自由な海賊王になるんだ」
「……っ」


「くそゴムいい加減にしろッ!!!」


しかし直後に鈍い音と同時にルフィさんの額に黒い靴の踵が刺さる。衝撃で後ろに落ちるルフィさんと……わたし?


「う、わ……!?」


そうだ私ルフィさんに抱えられてたんだ…!?
咄嗟に理解して体制を整え直そうとするがその前にどさっと落ちる音と、目前に迫る黒いスーツ。

目をハートにして手を伸ばしてくるサンジさんに、このままじゃぶつかる……!と、焦りなんとか身体を回転させサンジさんの横に受身を取りながら転がる。


「さ、サンジさん……!ごめんなさい!怪我は……!?」
「「「「……………………」」」」
「………………なまえちゃん」
「?、??」
「見事な一方通行だな」
「気付いてんのか、気付いてないフリをしてんのか」



気まずい空気が流れる船に首を傾げるが、ウソップさんがサンジさんを憐れな目で見ながら「気にしなくていいぞ」とぼそっと言ってくれたのでチラリとサンジさんと落ちたルフィさんを気にしながらもナミさんに声をかける。


「あの…!前方に煙が!」
「煙……あぁ、大丈夫。あれはホットスポットって言ってね、下に海底火山があるのよ」
「海底なのに火山なのか?」
「火山なんてむしろ地上より海底の方にたくさんあるんだから…、何千年、何万年後この場所には新しい島が生まれるの」


難しい内容を理解するように頭で噛み砕く。
知らないことばかりだ。
知らないことばかりだけど、無い知識を蓄えるのは案外嫌いじゃないかもしれない。


「なまえ?」
「チョッパーさん……自然ってすごいね」

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