01:こんなかんじ

「女王、!」
「〇〇さま!」


巡りゆく世の中に、ぽつりと置いていかれたような気になることがあります。でも、それはわたしだけが思うのではなく、きっとどんな人間だって感じることで、だから人はいつでも寂しい生き物なのです。


「・・・」
「ガン無視・・・!しかしお美しい!」
「今日のドレスは一段とお似合いになられてる!」
「おら写真を取れ!ブロマイドにして売り上げるのだ!!」
中「・・・相変わらずの人気で、」


世は混乱の時期を迎え、どうしようもない大人たちが騒ぎを大きくしながら、子どもの夢を奪っていきます。それだから今日だってわたしは、清くて美しいわたしでいなければなりません。美しさは身から溢れ出るものだとよく言いますが、実際のところは本当にそうであるのかは謎であり、煽るような目でこちらを見るナカムラに無性に腹が立つのだって、仕方の無いことだといえばそうなのです。周りには見えないように足の親指を踏んずけて、ぐりぐりと押し付けると、ナカムラは今に悶絶し始めます。


中「い、いだいいだいいだいいい!」
「今日はジュンとスズムラが帰国するのでしょう?」
柿「はい。お昼すぎになるかと」
中「足どけてええええ」
「そう。取引は」
柿「成功したと一報が入りました」
「よかった。じゃあ今日は美味しいワインを用意しましょう」
柿「え、俺も飲んでいい感じ?やったああ」
中「・・あっぶね危うくもげるとこだったわ」
柿「もげちゃえばよかったのに」
中「あ?」
「ワインは何にしよう、」
中「、ワインとか俺飲めないんだけど」
「外道。あなたはフランスから取り寄せたぶどうジュースか、己の血でも飲むことね」
中「いや、怖いっすお嬢様」
「それがいやなら真面目に働きなさい。サクライから話しは入ってるわ。スギタと一緒にあなたも追い出すわよ」
中「・・・へいへい」


権力は全部この手にある時、人はどうするのでしょう。望んでも手に入らない地位は、わたしにとっては望んでもいない地位であったのに、人はわたしを祀り上げて、それから讃えます。それしか脳のない馬鹿な民衆たちですので、いずれわたしがへまをすれば、皆こぞって殺しにかかるでしょうに。手のひら返しが大好きなこの世の中ですから、それも仕方の無いことだといえばそうですが、そんな人間はやっぱり寂しいと思ってしまうのです。


「あれ、キショーは」
中「あの人は3日後には戻る。少し手こずったから、だいぶ荒れてるみたいだけど」
柿「厄介だなあ」
「仕方ない。国のために戦ったのだから」
中「・・・気をつけてね、女王」
「なにを」
中「・・なんでもないです、」


この国はわたしの手で回っている。だから、此れ見よがしに突っ切るしかないのです。時に執事たちの手をも使いながら、ただ強くわたしは、君臨して。