つま先に染み込む露音

甘えてしまう。そこがわたしのいけない癖。というより、周りから甘やかされてしまうのだけれど、「そういうところがおまえの良さだよ」とさっくんは言ってくれる。

「でぃー」
「んー?」
「おねむです」
「ええー?あと少し起きれるって言ったじゃあん」
「だって眠気がくるんだもん」
「、もう」

午後2時あたりは暑すぎる。わたしには到底対応できない暑さを齎す太陽を、生まれてこの方好きだと思ったことはない。月は好きなんだけどなあ。太陽のひかりによって初めて輝く月は、なんとなく周りに頼って生きているわたしに似ている。

「仕事は?」
「ラジオだけー」
「少し、時間はあるね」
「でぃーは」
「夕方に取材がある」
「あと少し、あるよ」
「少しね、ほんと少し」
「少しでも、あるもんはある」

でぃーが困ったように今日2回目のもうー、を零す。牛みたい、というと怒られそうだったから言わなかった。もっと言えば、そんなにわたしを急かしてどうしたの?と内容を問うてしまえば、最後にそれに従わないといけない気がして、そんなことは言えない。

「本当に、眠い?」
「・・・うん」
「んーそっかあ」
「でぃーも、寝ようよ」
「んん・・・」
「忙しくしていいことないよって、さっくんも言ってたし」
「櫻井さん?」
「うん」
「一番忙しそうにしている人に言われてもねー」
「あは、それはそう」

さっくんは、でぃーの名前を出すと少しだけぎこちなくなる。いっぱい共演しているから仲が悪いわけではないだろうと思うけれど、あまりそういうのは好きじゃない。でぃーは、いつもふんわり笑う。そして夏にへばるわたしを許してくれる。

「ねね、」
「ん?」
「いつになったらそのでぃー呼びやめてくれるの」
「え、でぃー?可愛いじゃんだめ?」
「うん。なんかさあ、せっかく付き合ってるのにさあ」
「えーわたしは好きだよ、でぃー」
「俺はあんまりなの、でぃーは」
「むむむ・・・」

私は好きなんだけどなあ、でぃー。たしかに彼の名前の一つも、含まれてはいないけれど。付き合っているからという理由が、呼び合う名前に繋がるのがよく分からない。いつまでも好きな言い方ではいけないの?そんなこともひっくるめて考えると、わたしは男のひとの考えがあまり分からないのかもしれない。

「大輔、」
「うん」
「・・・やだ恥ずかし」
「ええなんでー」
「だいちゃん、くらいでどうですか」
「ええー」
「それかさっくんの要領で、おっさん」
「やめて、それだけはやめて」

それでも、男のひとにわたしは恋するんだけどね。甘やかしてくれるさっくんやでぃーに頼りきって、生きている。いざ手放されてしまえば、わたしはこの真夏の午後2時の過ごし方さえ分からず、溶けて死んでしまうんだと思う。


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