03


黒「よお、ひさしぶり」
及「いつもどうも。あ!紫那ちゃーん!久しぶり。今日も可愛いね!今日こそどう?2人っきりでご飯!」
花「…やめろ、ひいてるぞ」
「お久しぶりです。こんにちは…」
黒「悪いな、紫那は俺ら以外の男は受けつけねーんだわ。な?」
及「は?なにそれ。ありえないでしょ!」
「はは、ははは…(帰りたい)」

某7階ビルの4Fにあるコーヒー屋。ここがいつも及川たちとの取引現場だった。都会のど真ん中ではあるが、どこか隠れ家のように落ち着いたこの店を俺はまあまあ気に入っていた。コク深いコーヒーの味も申し分ない。隣にいる紫那は既に帰りたそうだが。

花「まあ、とりあえず用件からさっさと済ませようぜ」
黒「ま、そうだな。お互い暇ってわけじゃないんでね」
及「はいはーい…。国見ちゃん、アレ出して」
国「はい、」
黒「そいつ、初めて見る顔だな」
及「あ、この子?国見ちゃんだよー。同じ地元の後輩。歳はクロくんや俺より二歳下になるのかな?そっちにいるツッキーと同じ!で、合ってるよね?」
国「はい、国見です。よろしくお願いします」
黒「へえーうちの眼鏡くんと同い年ねえ、」
及「紫那ちゃんマッキーに会ったことあったっけ?」
「普通にありますよ?マッキーって呼んでるし…ね?」
花「おう」
及「え、初知りだよ。それ、え?」
花「なんなら前に2人でスイーツ屋に行ったこともあるぞ」
「また行きたい、」
及「は?!なにデートみたいな事してくれてるわけ?!ずる!俺も、」
花「じゃあ用件に戻る。国見頼んだ」
国「はい」
及「ちょっとお!?」

1番この中で若いらしい国見が、パソコンを操作して画面をこちらに向けた。及川は途中で話しを遮られて不服そうだが、手慣れたように話を進めるあたり、これがいつものこいつらの雰囲気なのだろう。

情報屋'SEIJO'が取り扱ってる情報は幅広く、大手企業のリストや国家機密、警察庁の情報なんかも掻い潜っている。10人以上の大きなグループである手前、情報はいつも速く正確である。この仕事を初めて以来のお得意さんということもあり、縁は深い。

国「こちらが今回頼まれていた某企業の密輸リストです」
黒「さんきゅー。…ほう、やっぱりそうか」
及「結構警備ガッチリだったよ?ここにも侵入しちゃうの?…殺し屋さんは」
黒「ま、仕事なんでね。今回は久々に大きな山だけど」
花「ひえー、恐ろしいなお前ら」
及「紫那ちゃんも行っちゃうんでしょ?危険だよー。そんなことしちゃあ」
「まあ…もう慣れました」
及「俺のところにおいでよー。危ないことはさせないよ?俺の側にずーっといてくれれば」
「…なんかそっちが危険な気がする、」
花「残念ながらその読みは正しいな」
「はは…ちょっとお手洗いいってきます」

相変わらずの及川のラブコールが紫那に飛び交う。隣で紫那は苦笑いしてるだけだが、及川の発言はエスカレートするばかりだった。一瞬、途中で射抜くような視線をあいつに向けていたのは多分気のせいではない。及川は半分本気であいつを手に入れようとしているように見えた。

黒くて長い髪に、白い端正な顔。見るだけでわかる抜群のプロポーション。はたからみても単純に美人だな、と思う。

黒「悪いけど紫那は俺らで手一杯なんで」
及「なにその意味深発言」
黒「意味深もなにも、…そのままな」
及「は!ずるいねー!紫那ちゃん本当に欲しくなる子、」
黒「残念だな。俺達で可愛いく手懐けてるよ」
花「…お前もなかなかイカれてるのな、」
黒「なにそれ、褒め言葉?」
及「!!あーもう!俺らのところ男しかいないし、もさい!やだ!」
花「てめえが言うな!」

こうやって釘を刺して、紫那は俺達のであると誇示するのがいつからか当たり前になっていた。よく言えばあいつを守っている、だが実際に言ってしまえば、俺のエゴというか独占欲でしかないことくらい分かってはいる、のだが。

国「ではこれ。この中に一応入れてるんで」
黒「おー、いつもどうも」
「終わった?」
黒「ん?ああ、終わったぞ」
及「今から時間ないの、紫那ちゃん」
「あー今日も本職があるので。ごめんなさい」
花「気をつけるんだぞ、」
「大丈夫。ありがとうマッキー」
花「また美味しいスイーツ行こうぜ」

いつの間にか仲良くなったらしい紫那と花巻。親しげに笑い合う姿は見ていて面白くない。女扱いに手馴れてそうなやつであればあるほど、ましてや相手が紫那ならば尚更だ。

車に乗り込み、置いていくぞと牽制したクラクションを鳴らせば、慌てて話を切り上げてこちらに向かってきた紫那。靡く髪が絹のように綺麗で、見惚れてしまうあたり彼女には結局のところ敵わないのだと思う。

及「…紫那ちゃん、いつかいただくよ」
花「ほんっとそればっかりだな」
及「国見もいいと思ったでしょ?」
国「まあ、綺麗だとは」
及「やたら紫那ばっかみてたくせに!」
国「…黒尾さんの過保護っぷりも相当ですね」
花「あいつはやばいな」
及「…ま、それも時間の問題なんじゃない」


異様な執着心は俺だけではないことは、わかっていたが。





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