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次の約束がないと。じゃあ次は?と言って、先の希望を取っておかないと目指す先が無いままでは、どうやっていけばいいか分からなくなって、とうに生きていけないと思う。

「マッキーどうしよう」
「知らねー」
「他人事みたいに」
「だって他人事だし」
「いや、穴兄弟みたいなものよ?」
「やめ、生々しい」

次の女の子と会う約束を取ってスマホを閉じた。大概の男を虜にするその容姿を霰もなく披露しながら、保健室のベッドで横になるなまえは確かに優良な女だと思う。いい性格をしているし美人だし仕事も卒無くこなせて、尚且つエロい。まあ俺もお世話になっているわけだが、自分のモノにするのはなかなか勇気がいる物件なので、告白したという黒尾を少し尊敬した。

「なんで今更告白したのかな」
「だなー」
「謎い」
「まあ、我慢出来なかったんじゃねーの?」
「ええー」
「自分以外に靡くなまえが、」

好きな人を独占したいなんていう欲望を人間は持ち続ける生き物だ。承認欲求とかなんとかが他の動物より強いのだと、どっかの心理科目で習ったのを思い出す。

黒尾は傍から見て可哀想なくらいずっとお前が好きだったぞ、なんて言ったらあいつに加勢しそうだったので言葉にはしなかった。変なところに疎いので彼女は少しおかしくて、だがそこに人は寧ろハマるのだろうと、保健医のような無駄なプロファイリングをしてみる。脈があるかないかで恋愛ができるなら、誰だってカップルだらけだと思う。

「そんなことなのか 」
「多分、そんなことと思えるのお前だけ」
「え、そうなの?」
「ほかにもいんじゃねーのそういうやつ」
「ええー誰だろ、」
「…自分で探してやれ」
「無理。そういうの分かんない」
「魔性の女ですなあ」

好きにならなくてよかった、と酷いことを思う。好きこそならなかったが夢中には少しなった。魅力的な容姿をチラつかせたらそりゃあ誰でもイチコロなんじゃないの?きっと岩泉とかウシワカ位の強者でないとスルー出来ないと思う。大抵の男は簡単で単純で、チラつかせた餌はすぐに食ってしまうから。

「まっつん、とかは」
「一静?、」
「うん」
「好きだけど」
「そういうことじゃないんだなー」
「付き合うの?」
「まあ…そんなとこ」
「うーん…どうなんだろう」

不毛な恋でしかない。俺としては親友の末路が1ミリでも幸せになればいいのだが、多分難しいだろう。だってそれを選ぶのは全部なまえで、俺達には何も出来ないし、

「タイプは、貴大なんだけどなあ」
「…それ、他では言わないでネ」
「え、なんで」
「面倒になるから」
「んんん、…っ」
「、俺の前だけね」
「…はあい」

魅惑的な笑みで背筋をぞわりとさせるから。距離を縮めると、香水の香りにクラりとやられる。軽いキス。何度も重ねるとそれは深くなって、別に恋人じゃない方がかえって彼女とは上手くやっていける気がするのは、俺だけだろうか。

「しばらくはできそうにないな」
「そう、?」
「なので堪能しまーす」
「さっき女の子と約束したくせに?」
「あバレてた?」
「貴大ひどーい」
「いやいや、なまえ先生には敵わないです」

全部全部、少なくとも俺は、自分が楽しければそれでいい。


都会の小鳥は鳴かない




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