荒北の変化
視線を感じる。いや、この気持ち悪さはきっと間違いではなく、たしかに何かの視線がこちらに向いている。
「・・・あ、」
荒「・・・何見てんノォ」
「いやー?、こっちの事情で」
荒「いやそれが気になるっつってんの」
「ええ、いやべつに・・」
荒「ナニ?言えないことでも考えてたのかよ」
真「え、ほんとですかあ?なまえさん」
「ちがうよ真波・・・あれよ、なんか荒北前より少し太くなったな、って」
真「え、荒北さんですか?」
荒「あ?そうか」
「筋肉質っていうか、そんなかんじ」
着替えの最中。野郎の裸などもう見慣れきっているなまえは事も無げにそれを伝えた。男共には細いとしか言われないが、たしかに1年の時よりも筋肉はついた。にしても突然だなと思いながら、そう言われるのは、まんざら悪い気分でもない。
荒「たしかにそうだろうな」
「1年の時細かったもんね〜私より細いかもって隼人と話してたもん」
真「へえ、そんなにですか」
荒「はァ?んなわけねえだろ!」
「んー、いまはさすがに私の方が細いかなっ」
荒「あ?張り合ってんじゃねえよ。てか、お前より細いとかこちらからゴメンだバァカ」
真「なまえさんって、1年の時から荒北さんと仲良かったんですか?」
「うーん、どうだろ。喋る方だったとは思う。まあ1年の時荒北友達いなかったしね!」
真「そうなんですかあ!」
荒「喜んでんじゃねえぞ真波!」
「荒北はね、入学したばっかの時から知ってたの。自販機の前でよく会っててー、ね?」
荒「忘れたわんなもん」
「ベプシばっかり買うから私の方が勝手に顔覚えちゃって、話しかけたら睨まれた」
真「うわあ、想像できる」
荒「もともも愛想はねえの、俺は!」
余計な昔ばなしはしなくていいというように真波の会話を遮ったが、なまえはぺらぺらと話し出して女だなあと思った。サイジャを羽織ってジッパーを締めると、筋肉の筋が浮き出て見えて、やっぱり知らないあいだに鍛えられたのだと思う。
荒「でもまあ、その後も喋りかけ続けたけどなこいつ」
真「、なんだちゃんと覚えてるじゃないですか荒北さん」
荒「!ばっ」
「えーだって反応はしてくれるから、話しかけていいのかなあって受け取った」
荒「睨んだ時点でやめろのサインだろ!」
「なにそれ、ドリカムみたいに言わないで」
荒「、んだそれ!」
「いつもブレーキランプ5回点滅アイシテルのサイン」
真「あはは、荒北さんってば大胆」
荒「ちっげーよ!」
完全に2人のペースに巻き込まれる俺は多分ツイてない。多分自転車部の中で1番はじめに話したのはなまえだった。とがってた俺に話しかけるなんざ、変わったやつだとかねがね思った記憶だけは未だにある。いや、変わったやつなのは今も同じで、ひょっこりと現れて俺の横を歩くのも臆さない。
真「だから今2人は仲良しなんだー」
「えー仲良く見える?」
真「見えますよ?俺のクラスで話題になってましたもん。3年のみょうじさんと荒北って人付き合ってるの?って」
荒「・・・は、あほらし」
「そうなんだ、?」
真「そしたら、せめて新開さんか東堂さんと付き合ってほしいってみんな言ってたけど、」
荒「おいどういうことだそれ」
真「いやあなまえさん人気なんですね〜」
外見か、要は。中身はなかなかいかれてるやつが、まあそれは1年のそいつらには知らなくてもいいことだ。