地雷は踏まない
回避した方がいい道はたくさんある。それは予測が立てば立つほど、その人間は得をする。
東「む?!荒北!お前はまたタオルを投げっぱなしにして・・・!」
荒「うっせェな!今片付けるとこだったんだよ!」
東「そのセリフ、寮でも言っていたぞ?!」
荒「んだよ!おめーは母ちゃんかよ!」
東「おまえの母親など死んでもゴメンだな」
荒「俺の方がゴメンだバァカ!」
「・・・」
人は帳尻合わせの生き物だと思う。何かが長けてる者はどこかで誤るし、未熟な人ほど懐が深かったりする。だから、みんな同じだねなんて言えばどうにかなる世界なのかもしれない。だから、もうやめたがいいぜ、おめさんたち。
新「おい、もうそこら辺にしといた方が・・・」
東「大体荒北、お前はだな!」
荒「うっせっ!おせっかい野郎がつべこべ言ってんじゃ」
「・・・ちょっと、」
荒「あ?」
東「む?」
新「・・・(あ、おわった)」
「ぴーちくぱーちくよく吠えるニワトリたちですね?うるさいんですけど。偏頭痛するくらいうるさいんですけど、」
東「、ぅ」
荒「っ(やべえ)」
新「・・ヒュウ、」
真「(あ、やばい空気だなあ)」
銅「(なまえさんがキレてる)」
黒「(てかニワトリって)」
「よそでしてもらえません?痴話喧嘩部室内禁止なんで」
どん、と大きな音を立ててメンテ用の器具が置かれると、さらに部室内に張り詰めた空気が流れる。今日のなまえはあまり気が長くないようだ。そういえば、女の子の日だったような気も、しないではない。
新「・・・寿一、やべー雰囲気だぞ」
福「・・・こういうのは、あまり仲介は入らない方がいい」
新「、ヒュウ(あ逃げた)」
泉「(福富さん逃げた)」
黒「(触らぬ神に祟りなし、ってやつか・・・?)」
3年目の付き合いから言えば、こういう時のなまえほど強いものは無いように思う。美人のキレてる顔ほど圧倒的に男を萎縮させるものはない。
「あー・・・拓斗いるー?」
葦「あ、はい!いますよ〜?」
「ちょっとお手伝い頼んでいいー?」
葦「どうぞ〜!」
こういう時に、なまえは決まって後輩とどっかへ行ってしまう。これは1日尽八と靖友干されるな、と案じつつ、消え去った台風の目に、部室内では一気にため息がこぼれる。
真「葦木場さんってこういう時にとっても助かりますね、黒田さん」
黒「ああ・・・天然も使いようだ」
新「尽八、靖友、やっちまったなっ」
荒「うっせぇ。おまえ愉快にばきゅんポーズしてんじゃねぇよ最悪な状況だぞこれは」
東「・・・どうする荒北」
荒「これは・・頃合いを見て土下座するしかねェな」
新「とりあえず今日1日はガン無視コース決定だな」
荒「なんだあいつ、生理か」
新「まあそうだな」
東「長い、1日になりそうだ・・・」
さっきまでの威勢の良さはなりを潜め、項垂れる2人は少し気の毒にも思える。落ち度があるので仕方ないのだろうが、これで俺まで余波が来るのだけは避けたいのだが。
荒「にしてもひっさびさに見たナ。あいつのブチ切れ」
東「できれば二度と見たくなかったのだがな、」
真「へえ、前にもあんな風になまえさん怒ったことあるんですか?」
新「ああ、あるさ。怒った時のなまえは、はっきり言って部内で誰も止められる人はいねえぞ」
東「フクでさえ、見えないふりをするからな」
福「・・俺は、知らない」
真「大概ですね、なまえさん」
真波がへらーっと笑う。明らかな温度差を抱えた2人は、今回は離れて見守ることにする。地雷は回避しないと、痛い目を見る。