「ヒーローっぽい・・・レスキューとか」
「そうだね!楽しみ」

今日のヒーロー基礎学は救助訓練らしい。バスの中は、歓迎遠足のように浮き出しだった雰囲気で、静かに外を眺めたりスマホを見つめたりしているのは極数人であった。

「・・・おいおまえ」
「なに、わたし?」
「てめぇだよコラ。話しがあるバス降りたらツラ貸せや」
「・・・私、生まれてこの方てめぇとか貴様とかで指図されたことないの」
「あ??」
「私の名前もしかして知らない?では自己紹介してもいい?私は、」
「あぁ?!!てめぇの名前くらい知ってるわ!!知多紫那!はなしがある!付き合え!」
「・・・爆豪、てめぇうるせえぞ。静かにしろ」
「おお?!爆豪、紫那にナンパか?!クラス中に公開たぁ男らしいぜ!!」
「ふ?!!!ふっざけんな!勘違いしてんじゃねえぞこらぁぁぁ」
「(かっちゃんが、からかわれている・・・!)」

斜め前に座る爆豪がぎゃあぎゃあと騒ぎ立てながら、バスの中はまた大きく盛り上がっているようだった。となりの轟は物静かに頬杖えをつきながら、何を考えているかも分からないような顔付きで、窓の外を眺めている。たいへん自由なクラスである。

「着いたぞーバスから降りろ」
「「「はーい」」」
「・・・話しって、このまえのこと?」
「あ?決まってんだろ。それ以外に何があんだよクソボケが」
「うん」
「この前は疲れたからってウヤムヤにされたがな。今日はきっちり話せや」
「、そうね。改めてあの日はありがとう」
「ンだから礼はいらねぇから話せっつってんだろ・・・!」

意外に彼は気になったことはしっかり記憶するタチだったようだ。話しを振りかけながら前だけを見つめる爆豪に、どこまでを説明すればいいのか少し悩む。

「多分あれは私を誘拐することが狙いだった。私の個性も素性も彼にバレていた。彼は自分のことを、敵連合のトップとか言っていたわ」
「・・・そうか」
「連れていかれそうになるギリギリのところを爆豪の登場で助けられたってわけ。爆豪様様ね」
「ハッ、もっと感謝しやがれクソが」
「だから言ったでしょ?ありがとう爆豪ぉ〜って?」

どうにも話しの埒が明きそうになかったので、咄嗟に身体を爆豪へ擦り寄せると驚いたような顔で爆豪はこちらを睨んだ。ある程度生きてきて自覚している。ハニートラップは大事である。それにあまり年齢は関係ない。

「て、てめえ!きめえ!離せや!」
「あら?だめだった?ごめんなさいじゃあ離れる」
「っざけんなよ・・・入試の時からてめぇはよォ・・・変に俺の神経を逆なでさせるのが得意らしいなァ!??」
「?別に私はその気がなかったけれど。爆豪がそう思うってことは、あなた自身が私に気を惹かれているっていうことじゃなくて?」
「なんだとてめええええ」
「(かっちゃんが口喧嘩で言い負かされている・・・!)」

爆豪が目をつりあげながらこちらを睨む。茶化しているようだがしかし、ほんとうにある程度の感謝はしているのだ。爆豪があの日状況を読み取って私を救おうとしたのは事実だし、今だってあの日のことを気にして私に経過を伺うあたり、彼はヒーローとしての能力に優れていると感じる。ネックになっているのは、あの好ましくない出会いと日頃の彼の行いである。

「てめぇあんまりなめた口聞くと、殺すぞ」
「・・・ほんとうに、感謝はしてる。あの時助けられたことは事実だもの」
「!っ、は?」
「救助訓練頑張りましょう。私もあなたも、救助に長けた能力ではないし」

感謝の意を伝えると、一瞬爆豪は面食らったかのように目を点とさせた。そんな顔もできるのかと笑うとまたすぐいつもの眉間にシワが寄った表情に戻るのだが、私にはその一瞬の爆豪の一面を見れただけで心が満たされた。


惹かれるものがある



あじさい