「・・・ありがとう、爆豪」
「気ぃ抜くなバカが!!」
「そうね、まだ・・・」
「紫那!爆豪!大丈夫か?!てかなんなんだこれ!!!」

息が切れる音。比較的、肉弾戦に強い個性が固まって倒壊ゾーンに飛ばされていた。爆豪と切島と背中合わせになって敵陣を向く。爆豪から強く握られた手首が、熱い。

「ここは私に任せて」
「だめだ」
「は?」
「てめぇは何もすんな」
「・・・やだ」
「はァ??!」
「まあ、見ててよ」

掴まれている手を握り返すと、驚いたのか爆豪の身体が少し揺れた。こんな所で時間を使うのは勿体ない。なるべく一瞬で、確実に。目を開いて、個性を発動する。先程の迎撃で大方の相手には触れている。意識を集中してヴィラン達の醜い願望を奪う。明らかな悪意の先にあるのは、決して幸せではない。意志の一部が抜けたヴィラン達がぽつりぽつりと戦闘態勢を解く。

「トドメを!爆豪!切島!おねがい」
「紫那の個性すげぇな?!こりゃあ手間ねえぜ!!」
「ハッ!一瞬で終わらせてやんよ」

勢いよく爆豪と切島がヴィランを倒していく。少し抜きすぎたが、まあいい。気になるのは、散らばる前にとらえたイレイザーヘッドの姿だった。あの瞬間、きっと彼は教員であることを優先した。あのときに僅かに感じた焦燥は、彼に少なからず弱点があることを物語っていた。

「わたし・・・相澤先生のところに行きたい」
「だめだ」
「嫌な予感がする。彼の個性は、あの戦いに向いていない」
「ダメっつってんだろーが!!あのワープ野郎の言葉忘れたんか?!クソが!」
「悪ぃが俺も爆豪と同意見だ。紫那おまえ、自分から身を差し出す気か?」


───数十分前

「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながら・・・この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴・オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして・・・」
「オール、マイトを?」
「それともうひとつ・・・1年A組知多紫那、あなたをお迎えに参りました」
「・・・!ヴィラン、っ」
「っ!知多!手ぇ離すなよ!」


皆と散らばる前に黒霧から言われた言葉が脳内をループする。あの時、わたし目がけて飛んできたあのモヤは、爆豪の軌道操作がなければ飲み込まれていたかもしれない。実体の精神状況が読めない黒霧のようなタイプにはわたしの個性が掛かるのに時間がかかる。切島と爆豪のいうことは、最もである。安全な場所へわたしは第一に守られる存在である。

「あなたたちの意見は、もっともだわ。わたしはあそこに行くと足でまといになる」
「ハッ!!分かってんならさっさとスっこんどけ!」
「でも、ごめん。やる」
「は?」
「彼らの目的はオールマイト殺しとわたしの保護。だから、狙われど私を再起不能にさせたり命を奪ったりしないはず。あとあの男とは一回接触してる。次は個性を出せる、というか確実に仕留める」
「・・・てめぇ、自分が何ぬかしてんのか分かってんのか?」
「だってヒーローになりたくてここにいる」
「ぁ?」
「・・それに、あなたがわたしを守ってくれるんでしょう?じゃあわたしたちは決して負けない。そう思わない? 」
「・・・っ、クソ性悪女が」
「紫那おまえ・・・強気が過ぎるぜ、」
「戦いに必要なのは己のセンスと体力と互いの信頼よ。で、どうする?逃げる?向かう?」
「・・・ヌケヌケと敵に掴まんじゃねえぞ!!捕まったらてめぇ諸共ぶっ殺す!」
「望むところね」
「よおーし、じゃあ行くしかねえな!!」

守られる存在など、真っ平御免である。なぜならわたしは強くて、ひとりになったあの日から、守られるほどの価値などないのだから。

向かい合う弱さが欲しい



あじさい