───遠い夢を見ているような感覚から目を覚ます。重い瞼を開けると、白い天井に、誰かの影。
「起きたかい」
「誠さん?」
「学校でヴィランに狙われたんだって?危ない目に合わせたね」
「お仕事は大丈夫なんですか」
「部下たちに任せてきたから、大丈夫」
警察庁長官─安浦誠。私が今、親戚を離れて暮らしを出来ているのは全てこの人のおかげであった。北九州事件をきっかけに、私の保護を提案、そして実行してくれた。一人暮らしの部屋や入学に必要な資金、全ては彼のはからいによって出来るものだった。
「・・・ついに現れてしまった、と言ってもおかしくないよ」
「それは、どういう」
「君の個性を求めるヴィランさ」
「・・そうですね」
「北九州事件のあと、君を守るためにすぐに報道規制をかけた。だがしかし時代だ。一度でたものはずっと残ってしまう」
「仕方ないです・・夢を追う過程には試練がつきものです」
「紫那さんは強いな。出来うる限りの支援は僕達でする。君には一人前のヒーローになってほしいからね」
「、いつもありがとうございます」
生きて来た中で初めて、温かい愛に溢れた人に出会った。それが誠さんだった。私はいつか、彼に、警察の人達に、この大きすぎる恩恵を返さないといけない。
「、必ずヒーローに」
「あんまり気負いしなくていいからね!さて、そろそろ学校に行く時間だ。今日は送っていくよ」
「朝?・・私、随分と寝ていたのですね。ありがとうございます。すぐに支度します」
今の私にはお金も、社会的地位も、なにもない。そんな私に無償の優しさをくれた彼らに、私が成せること、それは、将来ヒーローとして活躍する他無い。
***
「ここで大丈夫です。ありがとう、いってきます」
「気をつけて。いってらっしゃい」
誠さんは雄英近くまで私を送ってくれた。いってらっしゃい、なんて言われる日がくるとは、小さい時の私には考えもつかなかっただろう。
「知多か?」
「、轟おはよう」
「ああ。身体はもう大丈夫なのか?」
「うん、おかげさまで」
「そうか。さっきの車は誰だ?」
「警察の・・・今の私の保護者をしてくれている人」
「、そうか」
車から降りると後ろから轟に声をかけられた。昨日の襲撃の後からクラスメイトに会えていない。皆は無事だったのだろうか。なにより相澤先生の容態が心配だ。
「A組のみんなは、無事なの?」
「ああ、みんな無事だ。相澤先生も治療を受けて回復しつつあるらしい」
「そう・・昨日私あの後どうなった?」
「覚えてねえのか?ヴィランが逃げたあとその場に倒れこんで寝ちまったから、爆豪が担いで運んだぞ」
「爆豪が。また、お礼を言わなきゃ」
「また?」
「、実は数日前も変な勧誘から爆豪に助けられてて。不甲斐ない」
「そうか」
自分が個性の使いすぎて倒れてしまったあとのクラスの動きを聞いて、自分だけ遅れをとってしまったと反省する。一人でも勝てる強いヒーローになりたいのに、これじゃあヒーローの風上にも置けない。
「、知多」
「ん?」
「今日の昼、空いてるか?」
「うん空いてる」
「話したいことがある。飯でも食わねえか」
「うん、私でよければ」
「じゃあ宜しく頼む」
話しとはなんのことだろうか。轟の澄まし顔からその内容はよく分からなかったが、まあ昼聞けばいいかと投げかけるのをやめた。