「紫那ー体育祭に向けて特訓とかする?」
「するつもりだよ。家で安浦さんに稽古つけてもらおうかなあ、響香ちゃんは?」
「ウチは今日から学校で少し特訓して帰ろうかなって思ってるケド」
「私はプールで鍛えるわ、ケロ」
「みんな個性バラバラやから、鍛えるっていってもそれぞれやねえ〜うちも頑張らな!」
放課後。ヴィランの襲撃があったあの日からすぐだというのに、みんなは既に体育祭へと心を向けていた。プロヒーローにアピールする場。相澤先生の言葉通り、ヴィランに屈しないという英雄の確固たる立場を示すにも、体育祭は重要なポイントになる。
「あ、爆豪」
「・・ンだよ」
そんなクラスの士気が上がるのをよそに、爆豪はいつもの調子でバッグを肩にかけ教室を出ようとしていた。この前のお礼を言わなければ。そういえば、襲撃以来まともに会話をしていなかった。
「この前私を運んでくれたって聞いた。ありがとう」
「、ハッ!もっと感謝しやがれ性悪女が」
「それ、・・・」
「ア??」
「この前も同じこと言っていたけど・・・もしかして爆豪、語彙力意外とないの?」
「ち?!っげーわ!あるわ語彙力まみれだわクソが!」
「え?そうには、見えないけど・・・」
「てめぇのその減らず口、爆破で塞いだろかオイぃぃ・・・!」
「紫那おめえ・・・お礼したいのか喧嘩売りに来たのか分かんねえぞ」
「お礼したいのに、爆豪だと話しがスムーズに進まないの・・轟との話しはスムーズだったのに」
「ンだてめェ俺が半分野郎よりボキャ貧とか言ってんのか!??」
「、?まあ結果論だと。そうね」
「・・・コロス」
「やめろ爆豪。負けは素直に認めた方がいいぞ」
「轟おまえも煽んな!」
頭に血が上ってしまった爆豪との会話は収集がつかない。上鳴に喧嘩売りに来たと思われてしまったのは不覚だが、爆豪と落ち着いて会話をするのは今の私には難しい気がする。
「うおおおお・・・何事だあ?!」
廊下側でお茶子ちゃんの声がした。扉の外を見てみると、そこには人と人と人。体育祭の関連だろうか。ごった返す人の洞察を見るに、敵対した感情を受け取る。
「出れねーじゃん!何しにきたんだよぉ!」
「「敵情視察だろザコ/じゃない?」」
爆豪と言葉が被った。真似するなとでも言った目の爆豪と視線がぶつかる。お互い様である。
「このまえの襲撃を耐え抜いたクラスだから。とでもいった感じかしら」
「ッチ。まあ体育祭の前に見ときてェんだろ・・意味ねえからどけモブ共」
どうやら意見は同じだったようだ。モブは言い過ぎだが、意味が無いというのはその通りだと思う。相手を慮る言い回しが出来ないのがなんとも爆豪らしいが。
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「あァ?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ・・・普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴けっこういるんだ。知ってた?」
人混みの中から背の高い紫の髪の男の子が、訳ありげなトーンでこちらに話し掛けてきた。"苛立ち"と"憧れ"そして"劣等感"、そんな感情が読めた。それを私らに向けられたところでやはりそれに意味は無いのだが。彼の中には十分な理由があるようだった。
「(入試試験と個性の相性が不味かった、のね・・・)」
「敵情視察?少なくとも俺は、調子のってっと足元ごっそりすくっちゃうぞ、つー宣戦布告しにきたつもり」
紫頭の彼の目が静静と燃えていた。それを見ても尚、爆豪はどうでもいいというようにそのまま教室から出ていこうとしていた。全く気の毒な人である。自分主義にも程がある。
「待てコラてめえのせいでヘイトが集まりまくっちまってんじゃねーかよ!どうしてくれるんだ!」
「関係ねぇよ」
「はあ?!」
「上に上がりゃあ、関係ねぇ」
それだけ告げると、爆豪は人混みの中を強行突破して去ってしまった。大変シンプルに話しを結んだなと感心する。ただ気が強いだけではない。いつだって彼の中にある意識の高さが、発言に集約されていた。それに充てられて、A組の意識も更に高まっているように感じられた。
「ご用件はお済み?」
「・・・なんだおまえ」
「あなたの個性は精神を操るタイプのものかしら?」
「、?!なにを」
「まあグダグダ言わずに本番、頑張りましょう。・・と、いうことで」
「「「??」」」
「皆さん、"クラスに戻りません"?」
爆豪がクラスを出て場が緩んだこのタイミングに、皆の視線を集める。全体が私たちに向ける"興味"。今だ、と片目を瞑り、思考を吸い取る。いまからの練習のエネルギーとして有効に使わせてもらおう。吸収された生徒たちは、皆何事も無かったかのように、ちらほらとA組から離れていく。
「さようなら〜またいつか」
「紫那、助かるわまじで!!」
「いいえ〜みんな体育祭頑張ろうね」
「うん!頑張ろ頑張ろ!」
「上へ行こうぜ!」
「あのウインクを見たら最後、思考飛ばされるとか・・・おっかねえわ、」
「でも本望じゃね??あのウインク見られるんだぜ?な??峰田」
「間違いねーぜ!!!上鳴!!!」
「」