「知多紫那、ねえ・・・」
「はい」
「おまえの個性についてだが」
「・・・はい」
「いくつか聞いておきたいことがあってな。個性のリスクについてだが、こちらもよく把握出来てない」

相澤先生が寝袋から顔だけ出して話しを続けている。小汚く見えるのは多分あの無精髭のせいであって、肌自体は綺麗だなと近くで見ていると、話を真面目に聞けと言わんばかりにジト目で睨まれる。

「話聞いてたか?」
「はい、もちろん。私の個性の特性とリスクですよね。」
「そうだ。資料を読んだが、暴走するというのは具体的にどういうことだ」
「簡単に言うと強い願望や欲望を奪って私の中にいれるので、自分で精神のバランスを取るのが難しくなります。それで感情がごっちゃになって、暴走します。」
「どんなふうに、」
「私の感情と奪った相手の欲望との副産物なので、その状況によって暴走の形は異なりますが、相手に被害をもたらすようなことはいままで起きたことがありません。これまで起きた暴走は、何かを死ぬほど食べたくなるとか、猛烈に眠くなるとか誰かに触れたくなる、とかです。」
「なるほど。じゃあ例えば強い悪意を持ったヴィランと対峙し個性を発動させた場合は、敵味方関係なく周りを攻撃してしまう、ということもあり得るわけだな」
「その時の私の精神が不安定だと、可能性は、あります。いかに集中し、自分が常に落ち着いていられるかが大切です、」
「そうか・・・分かった。自分で個性をコントロールするのもヒーローとして当たり前のことだからな。これから鍛えていけよ」
「はい」
「何かあったら俺や周りの教師が止められるようにする」
「よろしく、お願いします」

淡々と話していく相澤先生は、合理性云々の話しぶりからして、とてもスマートなタイプのようだ。私の入学時に出した書類を見ながら確認を取っていく姿は、気だるげながらも、仕事がこなせる人間の装いである。

「それとだ」
「はい」
「おまえ、一度報道に出ただろう?」
「出ましたけど、・・・それがどうかしましたか」
「いや、それ自体が大したことじゃないがな。テレビに出ている以上、このネット社会のご時世、お前の素性は他のやつらと比べて流出しやすくなっている」
「それはあの爆豪とかいう人も同じなのではないでしょうか?」
「まあそうだが。お前の個性は変な奴らの目に留まりやすいからな、気を付けろ」

相澤先生がちらりと私の顔を一瞥して、話しを続けた。英雄がマスコミによく取り上げられるから、その配慮だろうか。たしかに毎年体育祭はテレビ中継がなされているし、この時代、国民中が英雄というところに一目置いている。

「話は以上だ」
「ありがとうございました」
「警察のお偉いさんたちによろしく言っといてくれ」
「分かりました」



個性のリスク



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