昨日は初めての泊まりで、騒ぎすぎたせいかみんなすぐ寝てしまった。
ベッドは一つしかなくて、今は妙が寝ていて、他は布団を適当に敷いて寝るという女子力のなさを発揮した。
妙が寝ているベッドの側にある窓のカーテンから差し込む朝日で私は目が覚めた。隣で寝ている神楽は寝相が悪くお腹が出ている。そっと近くに吹っ飛ばされていた布団を掛け直し、私は洗面所に向かい顔を洗った。
さっぱりしたところでお腹が空いていることに気づく。そういえば昨日はお菓子ばっかで夕飯という夕飯を食べていなかったなぁ。今すぐにでも朝ご飯を食べたいところだけどさっき水をとりに行った時に見たけど食材も少なかったし、料理なんてできそうにないメンツばっかりだし…
私は三人を起こさないように鞄から財布を取り出し玄関に向かった。まぁ…すぐ近くだしまだ朝だし誰にも会わないだろうしノーメイクで出発。しかし外に出るとさっきまで降っていなかったのに雨が降り出したので、神楽がいつも使ってた傘を借りて、外に出た。

まだ本降りじゃなくてよかった。もう夏なのに雨とか湿気で髪が…
紫外線と湿気は女の天敵である。

徒歩数分というところにあるコンビニに着き、傘を畳んで店内へ。パンとおにぎりと…神楽がいるから多めに買って後でお金請求しよう。籠にみんなが食べられそうなものを詰めて行く。
おにぎりは……


「あ、」

「あっ」


不意に誰かの手が自分のと重なってしまった。


「すみません、どうぞ」
と譲ろうと顔を向けると


「…?お前……」


本人だよな?というような
表情をする


「土方くん…!」

朝でもいつでも目つきがきつめのこの人がいた。


「やっぱりみょうじか、奇遇だなこんなところで。」

ふ、と少し表情を緩める。


「本当…あ、おにぎりどうぞ。買うつもりだったんでしょ?」


「あぁ…いや、やっぱいい。俺焼きそばパンにするから。」


「そう?なら遠慮なく…」


棚から梅、昆布、おかかといくつか籠の中へ。


「お前、それ全部一人で食うのか?」


パンにおにぎり、お茶、少しお菓子も入ってる籠を見て土方くんは眉間に皺を寄せる。


「違う違う、今神楽の所にみんなで泊まりにきてるから朝ご飯にと思って」


まぁ誰が見てもこの量を見れば怪しむよね。
ふふ、と少し笑ってしまった。


「なるほどな。」


「あれ、土方くんは家この辺?」


「あぁ、少し歩いたところにあるマンション」



雑談をしながらお互い会計を済ませ、店内を出る。


「は?雨なんか降ってたか?」

土方くんはそこで初めて雨が降っていたことを知ったらしい。


「降ってたよ、私が来る時も」

最悪。というような顔をする。
そんな顔を横から盗み見た。




「はい、」


バサッと傘を開く。


「ちょっと小さいかもだけど、入って行く?」


「…いいのか」


「うん。ちょっと狭いと思うけど。」


「……悪いな。」


「全然。」


傘はせめてと土方くんが持ってくれることになった。



「………」


「………」


「…そういえば」


「なに?」


「今日は化粧してないんだな」


「…あっ、」


咄嗟に顔を逸らす。


「今更だろ。」

はは、と笑う声が聞こえる。
土方くんの言う通り、今更すぎてもう隠すのも諦めた。


「いつも学校でもその状態で来てもらえれば助かるんだけどな、こっちの身からしたら」


「ふふ、それは無理かも」


「そうかよ…」


信号前で止まる。
数台車が通るだけで、あとは雨の音しか聞こえない。


「今のままでも十分だと思うけどな」


「え?」


タイミング悪く通った車のせいでうまく聞き取れなかった。


「…なんでもねぇよ。傘、ありがとな。助かった」


そう言って傘を返し、顔をそむけたまま走り出す。
まだ雨も降っていて、走る足元はきっと濡れてしまっているはずなのに気にせず行ってしまった。


「………」



私は後ろ姿を見つめながら、さっきの土方くんが耳が赤かったのが気になってしまい、ほんの少しの間動けずにいた。




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