青年5人とアヤの奇妙な同居生活は案外順調に進んでいる。今吉くんは持ち前の器用さで痒い所に手が届く感じ。宮地くんは口調は粗暴だけど上下関係とか礼節は弁えてて、そのベビーフェイスもあって接待向きでつい受付や秘書の真似事をさせてしまう。岡村くんは実はオトメンで、主に家事を担ってもらっている。岡村くんの煎れる紅茶は絶品なのだ。笠松くんは…いい加減女子に慣れて欲しいのだが、ぎこちない。そこが可愛いのだけれど。ともかく、裏方を任せている。適度な距離があれば仕事のできる人だ。そして忘れちゃいけない、黛くんはいい意味で存在感がないので、商談に同席させて書記や雑務をお願いしている。華々しい宮地くんみたいなタイプも良いけれど、それだと同席する旦那さんの顰蹙を買ったりするのだ。
 とまあ、仕事メインで語ったが、アヤは元来プライベートはだらしないタイプだ。一人暮らしの癖が抜けないので、最低限の衣服で家の中を歩き回るし、決まった時間に寝起きしないし、自炊が面倒で食事を抜いたり適当に済ませるなんて普通のことだった。それを甲斐甲斐しく年下の男の子5人にお世話されている。おかげで最近肌艶がいい気がする。

「最近なんか調子いい」
「そりゃ今までが今までだからだろうが」
「宮地くんきびしー」

 コーヒー派だったが、最近は岡村くんの淹れてくれる紅茶に夢中なので、もっぱら紅茶派だ。ちなみに私はストレートが一番好きだ。少し冷めてふーふー息を吹き掛ければほっこり飲める程度の紅茶をちびりちびりと飲む。はぁー、落ち着く。
 
「そうして見ると、ほんまワシらの方がよっぽどしっかりしてるわ」
「あー、今吉くんそういうこと言っちゃう?私これでも界隈ではそこそこ売れっ子デザイナーなんだけど」
「そういうところだろ」

 私は革張りの椅子にお行儀悪く体育座りして、お茶を飲んでいる。珍しくオフのため、今は起き抜けで岡村くんにブランチを用意してもらっているところだ。そんな気の抜けた私を見て、今吉くんが苦笑いをしている。格安ブランドで揃えたシックなシャツを高みえに着こなす彼は、優雅にコーヒーを飲んでいる。
 思わずごねた私を遠慮なく叩く黛くんも、似たような感じで甘めのミルクティーを飲みながら、私のタブレットを使って文庫本を見ている。実は黛くんは結構オタクらしく、ラノベが好きらしい。私も学生時代はよく読んでいたので、タブレットで買い直す許可を与えたのだ。

「そんな君たちにはトレーニングをしてもらおう」
「トレーニングぅ?俺たち現役は引退してっけどバスケやってんだぜ?ヨユーヨユー」
「チッチッチッ 確かに君たちムキムキマッチョだけど、使う筋肉が違うのよん」
「ムキムキマッチョって…」
「ちょい笠松くん、そこでジェネギャ感じなくてよろしい」

 馬鹿にしたように笑う宮地くんには、後で吠え面をかかせると心に決め、癒しの岡村くんお手製のブランチに手をつける。きっと腹ごなしには丁度いい運動になるだろう。
 オフなのでプライベートスペースとオフィススペースのパーテーションを開け、広いリビングフロアとして使う。トレーニングウェアに着替えたら準備万端だ。

「これは指導をもとに私が適当に掻い摘んだストレッチ?トレーニングだから、なんとも言えないんだけど。ヨガとピラティスのいいとこ取りって感じかな。トレーニング中は呼吸意識ね」

 

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