Re:後輩2



「な、なにして……!」
 勢いよく奥の扉が開かれ、xxxがあらわれた。この状況を見て唖然としている。彼女の左足には足枷がつけられていた。この女、xxxを監禁するつもりだったのか。喜多見から手を離してxxxに駆け寄る。彼女の前に跪き、今外すからと足枷に手を伸ばした。しかしxxxはそれを押しのけ、咳き込む喜多見の方へ寄っていく。制止の声をかけるが、聞いていないようだ。
 xxxが自分よりも後輩の女に駆け寄ったという事実に愕然とする。呆然としていると、xxxは救急セットを取りにリビングへ戻る様子を見せた。すかさず阻止しようと立ちふさがったが、xxxの真剣な表情に負けてつい譲ってしまった。目の前で後輩の女が手当てをされていく。xxxの手が自分以外の血で汚れていくのに我慢できず、包帯を手に取った。xxxの横にしゃがみこみ、あとは自分がやるからと伝える。反論を受け付ける前に作業を開始した。さっさと俺以外の痕跡を消してくれ。
 xxxが洗面所に行ったのを見届け、喜多見の頭に包帯を巻いていく。足枷の鍵はどこにあると問えば、挑発的な表情だけが返ってきた。先ほどとは違い嘘をつかないだけ賢いが、微妙な視線の揺らぎと微かに動いた足でバレバレだ。問答無用で彼女の足首を掴み、靴下をめくると鍵がアンクレットのチャームのようについている。迷わず引きちぎれば喜多見が痛そうに顔を歪めた。
 喜多見の手当てを終える。xxxはこの女の怪我をとても気にしていた。俺よりも後輩が大切だとでも言うのだろうか。いや、そんなことはあり得ない。だとしたら、何故。
 ふと花瓶の破片が視界に入った。俺も怪我をすれば、xxxにこれまでよりも構ってもらえるだろうか。今までは心配させまいと多少怪我をしても隠し通してきたが、心配するxxxもきっと可愛い。俺の血で汚れていく綺麗な細腕を想像して高揚する。床に散らばった花瓶の破片を手に取り、利き腕を傷つけた。すぐに気づかれてしまってはいけないので、車の中までは隠しておこう。視線を感じて顔を上げれば、喜多見が俺を睨んでいた。
 xxxが戻ってきた。すぐに駆け寄り、xxxの足枷をはずす。こんな所に長居はしたくないので、さあ行きますよと少し強引に連れ出した。

 車の中で、今回のことについて説教をする。xxxはきちんと理解しているのかいないのか、ただ素直に頷いていた。しかしこちらも「気を付けます」と可愛い顔で眉を下げて言われてしまってはあまりきつく言えない。xxxも思うところがあるのか、無暗に人を傷つけないでほしいとお願いをしてきた。可愛いxxxの頼みならば出来るだけ聞いてやりたいが、xxxに害をなす奴を放っておくわけにもいかない。それならばxxxに気付かれなければ良いか、と了承の言葉を紡いだ。
 車を停車させると、やっとxxxが怪我に気付いてくれた。俺の腕を一心に見つめ、心配そうに目を潤ませる。自分で手当をするのは難しかったと伝えれば「帰ったら私がやります」とxxxが言った。こんな顔をしてもらえるなら、怪我をするのも悪くない。
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