こんな休日もたまには良い



 柚に誘われて、美味しいサンドイッチがあると噂の喫茶店へ行くことになった。少々引きこもりの気がある私は、休日もあまり好んで外出をしない。今日のように用があれば外出もするのだが大抵は家でゆっくりしている。そんな私を気遣ってか、ただ自分が行きたいだけか、柚は度々私を誘ってどこかへ連れて行ってくれる。

 柚に案内されポアロと書かれた喫茶店についた。ガラス張りの壁から店内の様子が少し見える。まだお昼には少し早いくらいの時間なので、お客さんはそんなに多くない。せっかくなので人の少ないブランチにしましょう、という柚の言葉通りになったようだ。何がせっかくなのかは分からないけれど。
「いらっしゃいませ」
 店内に入ると、ウエイトレスさんが愛想よく席へ案内してくれる。いらっしゃいませ、とカウンターの向こうからも同様に声がした。もう一人男性の店員さんがいるようだ。
「サンドイッチが目的ですけど、コーヒーも美味しいんです。xxx先輩、コーヒー好きでしたよね?」
「うん。とっても」
 すいません、と柚が店員さんを呼ぶ。サンドイッチとブレンドコーヒーを二人分注文する。
「かしこまりました」
 朗らかに返事をしてウエイトレスさんは戻っていった。別段気になることもないが何となく目で追う。彼女は奥にいるウエイターさんと一言二言かわすと、すぐにこちらへ戻って来た。品切れだろうか。
「タイミングが良いですね」
 予想に反して、可愛らしいウインク付きで声をかけられた。思わずタイミング? とオウム返しをしてしまう。
「いつもはハムサンドをお出ししているんですけど、良い新作ができたとかで今ちょうど作っているみたいで。サービスにしますので、ぜひ食べて感想をお願いしたいらしくって」
 ウエイトレスさんがカウンターを指しながら言った。見ると、黒いエプロンの男性が確かにサンドイッチを作っている。私たちの視線に気づいたのか、ウエイターさんはこちらに軽く会釈をした。
「良いんですか? ぜひお願いします」
 柚がはしゃいだ。私も少し楽しみだ。

「お待たせいたしました。ハムサンドと、こちらフルーツサンドです」
 コトとテーブルに置かれた皿の上には綺麗な彩のサンドイッチが乗っていて、思わず感嘆の声をあげてしまう。
「コーヒーは食後にお持ち致しますので、その時にでもフルーツサンドの感想をお願いします」
「はい。ありがとうございます」
 ウエイターさんは爽やかな笑顔を残してカウンターに戻っていった。随分と整った顔の人だな、なんて感心していると柚が早く食べましょうと急かした。
「いただきまーす」
 まずはハムサンドから口にする。噂になるだけのことはあって、とても美味しい。柚も美味しいですねと食べていたのだが、そのうち何やらぶつぶつと思案していた。「私ももっと頑張らないと……」と呟いているのは聞こえたが、飲食店に張り合ってどうするんだ。フルーツサンドも心地よい甘さで大満足だった。

 食べ終わる頃にコーヒーが運ばれてきた。サンドイッチの味はどうだったかとウエイターさんが尋ねるので、美味しかった旨を伝えれば安心したように笑っていた。
「お気に召していただけたようで、嬉しいです。ぜひまたいらっしゃってくださいね」
 綺麗にしなを作ったウエイターさんはそのまま店の奥に消えていく。その後も少し柚と会話をしながらゆっくりと過ごした。コーヒーは驚くほど私の好みの味で、リピーターになりそうだと考えた。
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