日曜日の愚者

 毛利探偵の弟子として依頼の手伝いを申し出たのが今朝の話。午前中には依頼人の屋敷へ赴き、家宝を探し出して欲しいと与えられたヒントをもとに調査を開始していた。「世間は休日だというのに仕事かよ」とぼやく毛利先生を宥めながらコナン君と暗号の解読を進める。最終的には毛利先生に花を持たせる為どうすべきかと思案した。

「みなさん、ささやかながらも昼食をご用意させていただきましたので如何ですか」
 昼食時になると、依頼人がこちらへやってきて言った。どうやら名のあるシェフを抱えているようで、その名前を聞くや否や毛利先生が嬉しそうに了承した。蘭さんやコナン君も心なしか楽しみにしているようだ。
 席につき、談笑を交えつつ料理に舌鼓を打つ。ニコニコと当たり障りのない返答をして間を持たせ、食事もデザートを残すのみとなった時だった。依頼人が急に苦しみだし、椅子から転げ落ちた。場が一瞬にして凍り付く。蘭さんの悲鳴をきっかけに、毛利先生が依頼人へ駆け寄った。脈や瞳孔を確認し、静かに首を振っている。すぐさま携帯を取り出し警察を呼んだ。


 被害者の人間関係や過去を洗い、死亡時にその場にいた人々から容疑者を絞っていく。駆け付けた警察に「また君たちか」と呆れられながらも、なんとか捜査を進めていった。
 いくつかの痕跡を辿っていけば、案外あっさりと殺人の謎が解けた。それをどう毛利先生に伝えようか迷っていると、いつものように眠りの小五郎推理ショーが始まった。犯人を上手く炙り出し、被疑者もそれを認める。見事事件解決だと胸を撫で下ろした。

 ヴーヴーと携帯がメールの受信を知らせる。誰からだろう。受信したメールを開いて、思わず「はっ!?」と声を洩らした。大手ゲーム会社のメールマガジンで、それ自体はいつも軽く目を通すだけなのだが今回の内容は読み流せない。ユリシーズのDLC、だと。半年後にリリースか、なるほど。大変嬉しいが、まだ既存のボイスやモーション、衣装、イベントの半分も確認できていない。半年後までにコンプリートできるだろうか。
「あれ……もしかして安室さん、お好きなんですか? そのゲーム」
 突然後ろから声をかけられ、勢いよく振り向く。確か、千葉刑事と言ったか。いえ、と反射で否定しようとしたがxxへの想いを偽ることが出来ず曖昧に苦笑した。
「すみません。覗くつもりは無かったんですけど、ちらっと見えちゃって」
 それから千葉刑事は自分の携帯画面を見せ「実は僕も……」と照れたように笑った。肯定もしていないのだが“僕も”とは。そんな微妙な反応にも気が付かないほど、千葉刑事は同士を見つけたことが嬉しいのか言葉を続ける。そっと耳打ちするように話すのは僕や周りへの配慮だろうか。
「僕は同僚の子が一番好きで。安室さんは?」
「ああ、あの元気なイメージの。僕は患者派ですね」
「そうでしたか! やっぱ人気ありますもんね。まさに“もの言う花”って感じで」
 つい反応して、燃料を投下してしまった。千葉刑事はひとしきり同僚設定のキャラクターについて語った後、喋りすぎた自覚はあるのか「すみません」と軽く頭を下げた。いえいえ、と何でもないように笑う。カノジョについて熱く語りたい気持ちは痛いほどわかるので、むしろ少し羨ましかった。今日は出来るだけ早く帰ろう、と迎えてくれるであろうxxを思い浮かべて足を進めた。
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