これから……
「ん……」
レイラはゆっくり、瞼を開いた。
「あ、あれ……?」
一瞬、自らの置かれた状況が分からなかった。
どういう訳かレイラはベッドに寝かされているようだ。最低限のものしかなく、それすらに明日に備えてほとんど片付けてしまいほとんど何もない部屋。間違いなく、自分の家だ。窓から見える空は夕暮れである。
「あら、目が覚めたのね。具合はどう?」
掛けられた声に視線を向けると、銀髪の見目麗しき女性――リフィルが立っていた。
「先生……私……?」
「覚えてない? あなた、村へ戻ってきた途端に倒れたのよ」
「……そういえば……」
段々思考がはっきりしてきて、自分の身に起きたことを思い出す。
あれから村に戻ってきて、コレットの家で今後の打ち合わせをしようということになり、コレットの家へ向かおうとした時、突然激しい頭痛がしてレイラは倒れたのだ。
「コレットが体調が悪そうだと心配していたそうね。どうして隠していたのかしら?」
「……大したことがないと、思っていたので……」
リフィルに問われると、嘘がつけない。教師である彼女には子供の嘘を見破るなんてお手の物なのだから。
「具体的にはどう悪かったの?」
「頭痛が……軽いものだったのですけど、突然強くなって……」
「そう……吐き気などは?」
「ありません」
「今はどうなの?」
「ずっと痛かったのが嘘のように、治まってます」
そうした問答を続けていく。どこかで頭を打ったのか、いつから痛んでいたのか、問われては包み隠さず答えていく。
「レイラ、だいじょぶ?」
コレットがドアを開き様子を覗き込む。
「大丈夫。ごめんね、心配かけて。打ち合わせ、終わったの?」
「うん」
コレットは打ち合わせの内容を掻い摘んでレイラに話す。
コレットに同行するのは以前から予定されていたレイラ。豊富な知識を買われたリフィル。そして、傭兵として改めて雇われたクラトス。この3人であること。
出発は明日の夜明けであること。まずは南のトリエット砂漠へ向かうこと。
「それでね、今からロイドの家に行こうとしてるの」
「なら私も行こうかな」
「それがいいでしょうね。ロイドもあなたが倒れたと聞いて随分心配していたわ」
リフィルも同行しよう、と立ち上がる。彼女はジーニアスを呼ぶため一旦家へ戻っていった。
外へ出ると、クラトスが待っていた。ロイドの家へと向かう途中の森はモンスターが出る為だろう。旅立ちの前からコレットに怪我させてはいけない。
「平気なのか?」
「はい。申し訳ありませんでした」
心配してくれたらしいクラトスに軽く頭を下げる。
村の入口でリフィル、ジーニアスと合流し、皆でロイドの家へ行く。