その目的は

「う……」

目を開けば、見覚えのない場所にレイラは横たわっていた。空中に浮かんでいる何かの上だというのは見て取れたが、一体どこなのか。

「レイラ、だいじょぶ!?」
「コレット……?」

すぐ近くに、魔科学の檻に閉じ込められたコレットがいた。
オゼットの時に見られた異変は治まったように見えるが……。
もう少し近付いて様子を確認しようと立ち上がろうとすると、足が何かに引っ張られる感覚がしバランスを崩しまた倒れてしまう。

「……っ、鎖……!?」

足が鎖に繋がれて、まともに動けない。

「ようやくお目覚めですか、レイラ様」

以前見た、プレセアの客であった男の声。声の方へ振り向き、警戒心を剥き出しにする。

「お前は……!」
「ご存知ないですかな? ワシの名はロディル」
「ロディル……!?」

その名は知っていた。ディザイアン五聖刃の1人。絶海牧場の主。ようやく記憶と合致した。見覚えがあったのは、クルシスの記録で見たからだ。

「どうしてテセアラにディザイアンが!?」
「何も不思議なことはありませんぞ。教皇と手を組み、エンジェルス計画の情報をテセアラに流したのはこのワシなのですから」

つまりこの男が、プレセアをあのような目に遭わせた元凶、ということか。

「何が目的でそんなことを……!」

わざわざテセアラでそんな回りくどいことをするのだから、他のディザイアンたちとは目的が違っているのだろう。

「目的も何も、クルシスの輝石が欲しいだけですよ。魔導砲の制御のために」
「魔導砲……!」

以前にピエトロから聞いたことを思い出す。奴らは牧場の地下で、魔導砲を復活させようとしていると。

「ですが、その出来損ないの神子の輝石は使えません。念のため危険を冒してでもあなたを連れてきて正解でしたね」
「っ……!」
「コレットを出来損ない呼ばわりしないで!」

ロディルの言葉にコレットが俯いたことが、よりレイラを激昂させる。

「まあいいでしょう。あなたのそのクルシスの輝石も、魔導砲の制御には力不足ですが、あなたならばそれをより強力なものにすることも、新たに作り出すことも可能なのですから」
「……そんなこと……」
「できないとは言わせませんぞ。あのアンナの娘であるあなたに。プレセア以上の結果が望めるかもしれませんね。ふぉっふぉっふぉっ」

その言葉を聞いて、レイラは固まった。
今、ロディルは何と言った? 誰が、誰の娘であると。

「……ま……さか……」
「おや、気付いてなかったのですか?」

信じたくなかったけど、それが本当なら、今まで不思議に思っていたことの答えがすんなり解けてしまって。

「そんな……しっかりして、レイラ!」

あまりの衝撃にレイラは項垂れる。
色んな感情が綯い交ぜになって、次の瞬間には何も感じなくなる。
誰かが何かを叫んでいる。誰なのか分からない。何を言っているのか認識できない。それどころか、自分が何をしていたのかすら分からない。
何も感じない。何も思い出せない。さっきまであんなに必死だったのに。
何もできずにただ、レイラの意識は何かに封じられるように深い、どこかへ沈んでいく。

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