呼びかけ
ロイドが剣を振ればレイラはすぐさま受け止め、レイラが剣を振ればロイドも受け止める。
思えば2人がこうして剣を打ち合うのは初めてだ。けれど、どこかで似たような剣術と相対したような、そんな既視感があった。
「うわっ!」
「…………」
でもそんな既視感も、考えてる場合ではない。目の前のレイラに全意識を集中しないと、敗ける。
心無い故に容赦のないレイラと、たとえ心が無くとも大事な仲間を相手にしている事実からロイドの剣は鈍ってしまう。実力は大きく変わらないが、心理面から段々ロイドは圧されていた。
「くそっ……!」
「ロイド、危ない!」
仲間の誰かの叫びを聞いてロイドは咄嗟に身を伏せると、頭上に飛竜が通り抜けた。
起き上がるタイミングを見るため視線を上に向けると、近くにいた飛竜はレイラに斬り捨てられていた。
「近づくヤツは何でも敵ってわけか……」
その様子を見たゼロスが一瞬慄く。あんな状態のレイラに到底近寄れない。
「……そうだっ!」
咄嗟にロイドはあることを思い付き、実行に移す。
「ちょっとロイド、何してるの!?」
「そんなことしたら、アンタが死んじまうだろ!?」
それを見ていた仲間たちから次々に驚きの声が上がる。
ロイドは持っていた剣を捨て、レイラの前に立ちはだかったからだ。
近づくもの全てを敵と見なす今のレイラの前でそれは、命を投げ捨てるも同然の行動。だけど、
「俺はレイラの敵じゃない! レイラのこと、信じてる!」
危険な賭け。だけどロイドの心の中には確信があった。レイラにこの叫びは届くと。
「…………」
剣も捨てたロイドに何の躊躇なく剣を振り下ろそうとするレイラを前にしても、尚。
ロイドは目を閉じることもせず、まっすぐにレイラを見据えた。