取り戻す
ロイドを斬ろうとする剣が、振り下ろされようとして、
「……っ……うぅ……」
その寸前で止まり、剣が、いや、レイラの腕が震えていた。
「……ロ……イ……」
「レイラ……」
その様子から、ロイドはほっと息を吐いた。だけど、
「……う……あぁっ!」
震えたまま再び剣を振り上げた。
「くそっ、ダメなのか……!?」
一瞬だけとはいえ、レイラは意識を取り戻した。もう一押し、それで戻ってこれる筈なのに。
「ロイド!」
仲間たちの助けも、剣を拾って防ぐのも間に合わない。
誰もが、もう駄目だと思ったその瞬間、
「……え……?」
ロイドのエクスフィアが一瞬光り、いつもより一際、暖かいものに包まれる感覚がした。
――もうやめて、2人とも
聞き覚えのない、けれどどこか懐かしく思える女の人の声を聞いた気がした。
改めてレイラを見ると、レイラは再び剣がロイドを斬る寸前で、今度はぴたりと止めた。その光のないままの瞳から、一筋、雫が零れる。
「……おかあ、さ、ん……?」
レイラのその呟きと共に力なく腕を下ろし、その手から剣がすり抜け落ちた。
そこから、あることを察したロイドは再び、呼びかける。
「レイラ……いや、姉さん……」
ずっと会いたくて、必ず会えると信じていた人が目の前にいる。
レイラは、ロイドの呼びかけにはっと顔を上げる。
「……私のことを姉と呼んでくれるの……? あなたに嘘ついて、傷つけようとしてた私を……」
レイラはそんな自分が許せなかった。知らなかったとはいえ、大切な人にあまりな仕打ちをして。自分が不甲斐ないばかりに大切な人を危機に陥れて。
「……ああ」
迷いなく頷くロイド。全て許すというのだ。
「……う……」
堰を切ったようにぼろぼろと止めどなく涙を溢れさせるレイラ。
ついに堪えきれなくて、その場に蹲り慟哭する。
「うわああぁぁ……!」
その瞳は先程までの無機質なものではなく、いつものレイラのもの。レイラは完全に、心を取り戻せた。
「……ごめんね……ロイド……」
ロイドは何も言わず、ただ笑みを浮かべてレイラの肩に手を置いた。
「全くもう、ヒヤヒヤしたよ」
「さあ、泣くのも笑うのも、ここに来た目的を全て果たしてからよ」
ほっとした顔でジーニアスやリフィルはロイドとレイラを鼓舞する。大分数は減ったが、まだ飛竜は残っている。コレットもまだ解放していない。
「皆もごめんね。迷惑かけて」
「そう思うなら、早くアンタも戦いな!」
「うん!」
涙を拭い、落とした剣を拾う。
「……いくよ、エアスラスト!」
「真空裂斬!」
レイラの魔術で動きを止めた所にロイドが斬りかかる。
2人が参戦して皆の負担も減り、あっという間に飛竜は全滅できた。
「コレット……!」
後はコレットを、そう思い振り返るが、
「……もうダメ、間に合わない……!」
コレットは目を瞑り首を横に振った。