笑顔

プレセアを安静にさせるため、そして疲弊した皆も休むために適当な場所へ降り立つ。

「みんな、大丈夫か?」
「俺さまは生きてるぜ〜」

全員の安否を確認した後、リーガルが疑問を口にする。

「……しかしあのロディルとかいう不気味な男、何が目的でコレットとレイラを誘拐したのだ?」
「魔導砲の制御に、クルシスの輝石が必要だとか言ってた。でも、私のはだめなんだって……」
「それで、私なら強力なクルシスの輝石を作れると見たロディルは保険として私を連れて行って、実際に使おうとした……今は戻れたけど、あのままだったら相当危なかった」

クルシスにいた頃、レイラに大した情報が与えられなかったのと同じように、レイラのクルシスの輝石も天使化こそできてもあまり強力な物ではなかったことが、不幸中の幸いだったということだ。

「魔導砲……?」
「前にハイマで助けたピエトロも魔導砲のことを言ってたわね」

プレセアのことを見ていたジーニアスが声を上げる。

「プレセアが気付いたよ!」

目を開いたプレセアは、まだ体は動かせないままでも、何とかコレットに視線を向ける。

「コレットさん……無事……でしたか?」
「うん。プレセアのおかげだよ」

コレットが笑って答える。

「…………」

その様子に安堵したように、プレセアは目を細め、頬や口角は上がる。

「プレセアが……笑った……!」
「……やはり……似ている……」

子供らしい無垢な笑顔は、これが本来の彼女の姿なのだろう。

「さーて、かーわいいプレセアちゃんが笑ったところで、そろそろ次のことを考えようぜ」
「そうだよね。コレットとレイラも戻ってきたし、この後はどうするの?」
「決まってる! 世界を2つに切り離すんだ」
「2つの世界の精霊と契約するんだな」

世界を結びつけているのは精霊が楔となっているから。2つの世界の精霊を同時に目覚めさせれば楔は抜ける。なるほど、とレイラは固唾を呑む。

「あたしの出番だね。わかったよ。手始めに土の精霊ノームと契約するのはどうだい? ここから近いはずだよ」
「よし、そうしよう。……先生? それでいいよな」
「……え? ああ、そ、そうね。それでいいわ」

リフィルにしては珍しく話を聞かずぼんやりしていた。

「……先生? 何か元気ねぇなあ」
「何でもないのよ」

らしくない様子が気になるが、今は休息をとることを優先することとなった。

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