出会う
少年は特に大きな怪我はしておらず、すぐに意識を取り戻す。
「一体何があったんだ」
「……よく分かりません。突然雷が落ちてきて、天使様が村を襲ってきたんです」
「天使ですって?」
「羽が生えてました……。羽が生えているのは天使様なんですよね」
「やっぱり、あの雷はクルシスの裁きの雷だったんだ……!」
分かっててもどうにもならなかったことがもどかしい。
「クルシス……。村を滅ぼしたのは天使なんですね……」
「プレセア……大丈夫か」
「……大丈夫です。でも……この釈然としない苛立ち……! ……これが怒り……?」
生まれ故郷を理不尽に奪われて、プレセアは怒りを覚える。ようやく心を取り戻せたのに、こんな想いをしてしまうなんて。
「しかしよく無事だったなあ。生き残りはお前だけなのか? 名前は?」
「ボクはミトス……といいます。村の外れに1人で暮らしてたから……」
「英雄ミトスの名前だ!」
ミトスの名前自体は珍しくもないが、ロイドは実際にその名前の人と出会うのは初めてだ。
不意にジーニアスがあることに気付く。
「……あれ。もしかしたら……キミ、ハーフエルフじゃないの」
そのことを指摘されて、ミトスは明らかに動揺した。
「ボ、ボクは……ちが……」
取り繕うように首を振り、何かを恐れるように後ずさる。
「安心なさい。分かるでしょう。あなたも私たちと同じ血が流れているのなら……」
リフィルが優しく微笑み、ミトスを諭す。
「あなたたちも……ハーフエルフ……ですか! でも人間と一緒にいるじゃないですか!」
「だいじょぶだよ。私たちみんな、2人の友達だから」
「……人間がハーフエルフと友達? 嘘でしょう!」
「嘘じゃないよ。ボクと姉さんはこの人たちの仲間なんだ」
「安心なさい」
「……う、うん。でも……」
未だミトスは信じ難いような顔をしている。
「無理もなかろう。このオゼットはハーフエルフ蔑視の激しい村と聞く。この村に隠れ住んでいたのなら、辛い思いをしただろうに」
人間であるプレセアですら村の人たちは気味悪がっていた。ハーフエルフならそれで済まされなかっただろう。
ふと、村の外から、2人の人物が駆けつけてきた。
「これはどうしたことだ……」
「あんたは、確かアルテスタさんだったな。どうしてここに……」
「裁きの雷がこの村目掛けて落ちたのを見て……。しかしこれは一体……」
「クルシスの……天使たちの仕業です……」
プレセアが答えたのを見て、アルテスタが目を丸くする。
「プレセア! 正気に返っているのか! ……なんということだ。これは実験の失敗の見せしめなのか……」
「どういうことだい。見せしめって……」
「……何でもない。何でもないんじゃ!」
アルテスタは逃げるようにその場から立ち去って行った。
「ま、待てよ!」
追いかけようとすると、タバサが立ち塞がった。
「マスターは……自分のセいでオゼットが破壊サれたと思っているのでス」
「アルテスタさんはオゼットと関係があるんですか?」
「……はい。スみまセん。マスターが心配でス」
タバサもアルテスタを追って言ってしまった。
詳しい話を聞くために、みんなも彼らを追いかける。