旅立ちの時
「神子様、頑張ってください」
「うん、頑張るから」
「コレット、元気でね。姉さんもレイラも気を付けて」
「だいじょぶだよ、ジーニアス」
出立前、村人総勢の見送りにコレットは笑って応えていた。
「……ロイド……?」
レイラはふとその中にあるはずの姿がいないことに気付いた。
「神子、そろそろ行くぞ」
「はい」
「あ……」
空が段々明るくなってきた。出発の時だ。
待つわけにもいかない。若干後ろ髪を引かれる思いでレイラも村の門をくぐり外へ出た。
歩きながら、レイラはふとイセリアの森の方角を振り返る。
「ロイド、来なかったね。薄情者め」
「ううん、これでいいの……」
「コレット?」
レイラの呆れたような軽口にコレットは首を振った。
*
コレットやレイラはあまり旅慣れてなかったが、リフィルやクラトスがそれとなく気を遣った甲斐あって日暮れの前にトリエットに無事到着することができた。
「コレットもレイラも、慣れない旅だけど、よく頑張ったわ。買い物が終わったら2人は先に宿で休みなさい。後は私達に任せて」
「私はまだだいじょ……きゃっ!」
露店を巡り歩いていたコレットが砂に足をとられたせいかバランスを崩す。そして――
「コ、コレット! 大丈夫!?」
「うん、だいじょぶ……どうしよう、やっちゃった〜!」
レイラの手を取り立ち上がったコレットは建物にできた見事な人型の穴にうろたえる。
「……神子が迷惑をかけた」
何事かと周囲に人が集まるも、クラトスとリフィルが2人を引っ張りその場から離れた。
「……コレットは宿で休ませた方がよさそうですね。違う意味で」
「……そうね。あなたが付いていてもらえる?」
そんなことがあったので、情報収集はリフィルとクラトスに任せて、コレットとレイラは宿の部屋で休むことになった。