姉と妹
アルタミラの街に足を踏み入れようとなった時、リーガルが足を止めた。
「すまないが、私はここで待たせてもらう」
事情を聞いても答えてはくれなかったが、とりあえずはリーガルは入り口で待ってもらうことになった。
街の人からリフィルらしき人物を見かけてないか聞いても有用な情報は得られなかった。
街中にある慰霊碑――昔起きた事件のものらしい――の近くまで来た時、慰霊碑の前に立っている老人が声を上げた。
「……アリシア! アリシアか!」
プレセアを見て信じられないものを見たかのように驚く老人。プレセアの方は、言われた名前を聞き驚きを示す。
「アリシアを……知っているんですか!」
「え? お前さんは一体……?」
「アリシアは……私の姉妹です」
老人は腑に落ちたように息を吐き、そして肩を落とす。
「おおお……そうか。そうだな。アリシアは随分前に亡くなったのだ。こんな所にいる訳がないな……」
「……亡くなった……!?」
思いもよらない事実に、プレセアは言葉を失う。
「どういうことなんだ」
「アリシアは貴族のブライアン家に奉公に来ていたのだが、事件に巻き込まれて、亡くなってしまったのだよ」
「亡くなったんですか……! どうして!」
コレットの問に、老人は首を横に振った。
「それは私の口からは言えぬ。許しておくれ……」
ただの事件や事故という訳ではないようだ。その事情はレイラにも計り知れない。
「この街にあるレザレノ・カンパニー本社の空中庭園にアリシアの墓がある。よかったらそこへ行っておあげ。妹が来てくれればアリシアも喜ぶ」
老人は社員証をプレセアの手に渡したら、そのままその場から去っていった。仕事があるのだろう。
「妹? プレセアがお姉さんじゃないの?」
「変だな? 妹がいるって聞いてたのに……」
「きっと三人姉妹なんですよ〜」
「ンな馬鹿な……」
そのやりとりに、レイラは少し心に引っかかるものがあった。プレセアに耳打ちをする。
「プレセア、あなたは……今、何歳?」
「……!?」
はっとしてプレセアはレイラを見やる。
「答えなくて大丈夫。今ので知りたいことは大体分かったから」
答えさせるのは酷だろう。妹と呼ばれたことで、プレセアはただでさえ失った時間を意識してしまっているだろうから。
クルシスの輝石はその人の時間を止めることもできてしまう。その実験体にされていたプレセアもそうなるのはおかしいことではない。そしてきっと、皆の想像以上の長い時間を止められていた。察することは容易いが、レイラの口から言えることではない。
「……行こう、お墓参り」
「……はい」
いずれにせよ、アリシアのもとへ行くべきだということは変わらない。