再会と、頼みごと

空中庭園。その真ん中の分かりやすい場所に墓標があった。
アリシアのものだ。名前も刻まれている。
プレセアが若干覚束無い足取りで墓まで歩み寄る。

「……アリシア……こんな姿に……」

ただ墓を見つめるプレセアの胸中には、計り知れない悲しみに包まれているだろう。

「……これは、何ですか?」

墓石に埋め込まれたものをミトスが指し示す。およそ、墓に似つかわしくないそれは。

「ここに埋められているのは、エクスフィアだ!」
「どうしてエクスフィアが……」

疑問を呈した時、その場に声が響く。

――お姉ちゃん。お姉ちゃんでしょ
「……! アリシア……?」

エクスフィアの前に、人の姿が浮き上がる。
プレセアによく似た顔立ちの少女。年の頃はプレセアより少し年上に見える。

『消える前に会えてよかった……』
「どうなっているの? まだ生きてくれているの?」
『私は……今、エクスフィアそのものよ。もうすぐ意識もなくなってしまう。私の身体はエクスフィアに奪われたまま死んでしまって、私の意識はエクスフィアに閉じ込められてしまったの』
「……あなたまでエクスフィアの被害に……」

プレセアの声が震える。アリシアはそっと目を伏せ、そしてある懇願を。

『お姉ちゃん、お願い。私が消える前に私のご主人様を、ブライアン様を捜してきて』
「ブライアン……? あなたが奉公に出た貴族?」
『そう……彼が私を殺すことで……』

アリシアの姿が薄れ、見えなくなっていく。言葉も途切れてしまう。

「アリシア! その人に殺されたの!? ……教えて!」
『……お願い……お姉ちゃん……』

アリシアの声は、それきり聞こえなくなった。
プレセアは俯く。

「ロイドさん。お願いします。アリシアの仇を、探してください」

静かな怒りを募らせた声色。ロイドたちもアリシアの仇探しに一念発起する。


「……知ってるんじゃない? ブライアンって人のこと?」
「さあ? 何のことやら」

ブライアンの名はレイラも一応聞いたことはある。テセアラの中でも指折りの名家。ゼロスならもっと詳しい筈だ。

「…………」

レイラが軽く睨んでもゼロスは意に介さない。

異界の扉の噂を小耳に挟み、予想通りリフィルがそこにいる可能性が浮上する。
リフィルが何のためにそこに行くのかは分からないが、手がかりがそこしかない以上、見に行ってみることとなった。
プレセアの問題は、とりあえずはリフィルのことが済んでからだ。今から異界の扉へ行けば日が暮れて月が出てくるギリギリくらいには到着するだろう。のんびりしていては扉が開いてしまう。

[ 122/226 ]
prev | next
戻る