異界の扉
異界の扉に1人佇むリフィルを見つけた。
「先生!」
声を掛けて、駆け寄ってみれば、リフィルはまさかこんな所に皆が来るとは思わずに目を丸くする。
「みんな……どうしてここに」
「姉さんが心配だからに決まってるだろ」
「1人でこんな所まで来るのは危険です。同族として、放ってはおけません」
「どうしてこんな所へ来たんですか?」
コレットが問いかけると、リフィルは再び視線を異界の扉へと戻した。
「ここは……私とジーニアスが捨てられていた場所だから」
「……何言ってるんだよ。先生たちはシルヴァラントの人間だろ」
「……いいえ。コレットとレイラを助けた時、たまたまこの場所が目に入ってずっと気になっていたの。そして2つの世界を繋ぐ二極の話を聞いて、確信したわ。ずっと探していた風景はこの場所で、探していた遺跡はこれだったんだって」
リフィルの吐露した事実は、それはつまり、
「あんたたちは、テセアラの生まれだっていうのかい?」
リフィルとジーニアスはテセアラ生まれで、異界の扉を通りシルヴァラントに来たということになる。
ジーニアスがそれを否定した。
「うそだ! だってボク、イセリアの記憶しかないよ。こんな所知らない」
「……私たちはエルフの里で生まれ、育った。そしてその後疎まれてここに捨てられたの……。ここが伝説のシルヴァラントへ続く道だと伝えられていたから」
「エルフの里……あのエルフしか入れないという秘密の村のことですね」
「エルフの里はシルヴァラントには存在しない。なら、先生たちは本当に……」
リフィルの言う事が確かなら、2人は紛れもない、テセアラの人間だということになる。
「ええ。詳しい経緯は分からない。でも、確かに私は生まれたばかりのジーニアスと共にここへ置き去りにされた……。そして、シルヴァラントへ流れ着いたのよ」
リフィルの語る真実に、口を挟む声が、割り込む。
「では、今度こそ黄泉の国へ送り込んでやろう」
仲間たちの誰でもない声。
「誰だ!」
振り向いた先にいたのは、赤い陰。
「くちなわじゃないか! 一体何を言い出して……」
しいなの問いかけが途切れる。彼の背後には教皇騎士団がいたから。
ミズホと敵対してる筈の教皇騎士団を従えている様相は、明らかな異常事態だと分かった。