扉の先
「うわっ!」
気が付けば、先程までいたのとは別の場所へと放り出された。
レイラたちには見覚えのある場所だが、そうでない者たちもいる。
「……ここはどこだ」
リーガルの問いに答えるために、リフィルが周囲を見渡す。
「……多分、パルマコスタの外れ……だわ」
「シルヴァラントですか」
「……マナの量は増えてるみたいだけど、間違いないよ」
ジーニアスも断定する。確かに皆は、異界の扉を通りシルヴァラントに来たのだ。
「うひゃ〜。こんな形でこっちに来るとは思ってなかったなぁ……」
「ゼロス! どうして邪魔したんだい」
詰め寄るしいなに、ゼロスは呆れたように言い放つ。
「……あのな〜。お前だって死にたかった訳じゃねぇだろ」
「……それは」
図星をつかれて、しいなは俯いてしまった。
「第一、お前が死のうが死ぬまいがあいつらは俺たちを狙ってきた筈だ。教皇の命令ならな」
「くちなわが教皇とつるんでるっていうのかい?」
「そうね。一緒にいた刺客は教皇の手の者でしょう」
「間違いないな」
くちなわはミズホを裏切ってまで、しいなが憎かったということだ。
「……しいな。無茶しちゃだめだよ。私と同じ間違いはしちゃだめ。自分を犠牲にしても、いいことはないよ」
「私たち、しいなに死んでほしくないんだから。たとえ私たちを助けるためでも……ううん、私たちのせいで死んでしまうのは嫌だから」
しいなはコレットが犠牲になることを厭うたのに、そのしいなが犠牲になっては意味がない。
「そういうこと。ゼロスにお礼を言えよ、しいな」
「……ありが……とう」
「なーになーに。キスの一つや二つくれても罰は当たらないぜ」
照れ混じりのしいなの感謝を茶化すゼロスに冷たい視線が突き刺さる。
「……ゼロスくん、最低です……」
「……うっ、キツい……」
ミトスが不安げに口を開く。
「でもこれからどうするんですか?」
「折角シルヴァラントまで戻ってきたんだ。ロディルのこともあるし、ディザイアンの様子を探ろう」
「ミトスはどうするの? 巻き込むわけにはいかないよ」
流石にシルヴァラントを連れ回すのは危険だ。
「パルマコスタの総督府に預けたらどうかな」
「ニールか……そうだな、そうしよう」
「ボクも戦います!」
ミトスは反対するが、ジーニアスが苦言を呈した。
「何言ってんだよ。エクスフィアを装備してても危険なんだよ」
「そうよ、ミトス。気持ちはありがたいけれど、ね」
「……そうですね。分かりました」
全く知らない場所に1人でいさせるのは不安なのだろう。ミトスの気持ちも分からないでもないが、それでも危険な場所にミトスを巻き込むわけにはいかないのだ。
ミトスもそれは分かっているのだろう。納得はしてくれた。