預かりもの

総督府を訪ねると、コレットたちの姿を見てニールは喜びを顕にする。

「神子様! ロイドさん! 封印解放の旅は順調ですか?」
「あ、えっと……実は……」

コレットは思わず言葉を詰まらせてしまう。

「ああ、じゅ、順調です! それよりちょっとこいつを預かってほしくて」

ロイドがすかさずミトスを指して頼むと、ニールは不思議そうな顔をする。

「それは構いませんが、この子は?」
「訳あって一緒に旅をしているのだけれど、これから私たちが向かう場所はかなり危険なのよ」
「ではもしや、パルマコスタ牧場へ向かわれるのですか!」
「え? それってどういうこと? あそこは潰れちゃったでしょ」

思いもよらぬ場所に言及されて、皆の頭に疑問符が浮かぶ。

「違うのですか? 最近、ディザイアンが牧場跡をうろついていると報告を受けて、我々も警備を厳重にしていたのです」
「まさかマグニスが復活したのかな?」
「関係があるのかは分かりませんが、ここしばらくイズールドとパルマコスタを結ぶ海路でディザイアンの襲撃を受けると聞いています。どうも海底に巨大な建造物を作っているようだと」
「あの海域には絶海牧場があったわね」
「確か、あそこの主はロディル……だとすると……」

巨大な建造物、その心当たりはすぐ浮かぶ。

「ロディルが建設してる魔導砲かもしれない」
「気になるなら確かめてみればいいじゃね〜の」
「それに魔導砲が外れでもパルマコスタの牧場が本当に復活したのなら、この街もルインの二の舞になっちまうよ」
「そうだな。とりあえずパルマコスタ牧場へ行ってみるか」

話は牧場を確かめるほうでまとまる。

「……ということらしいわ。無事に帰ったら彼を引き取りにきますから」
「そうですか。わかりました」

ミトスは不安そうに皆を見渡す。

「ジーニアス、気をつけて。リフィルさんもロイドも……皆も」
「ああ。しばらく待っててくれよ、ミトス」
「うん。それからジーニアス。よかったら、これ持って行って」

そう言ってジーニアスに笛を渡す。

「これは?」
「ボクの……亡くなった姉さまの形見」
「そんな大事なもの!」

ジーニアスは預かれない、と返そうとするが、ミトスはジーニアスに持っていてほしい、という。

「危険になったら、これを吹いて。何ができるか分からないけど、もしかしたら、助けられるかもしれないから」
「分かったよ……ありがとう。必ず戻ってきてこの笛、返すから」

ここまで言われては、ジーニアスも笛を受け取るしかない。
ミトスを預けて、笛を預かり、皆はパルマコスタを発った。

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