醜悪なもの

最上階、管制室。そこでロディルは待ち受けていた。

「生きておったか……神子崩れとその仲間めが。ゴキブリ並の生命力だのう」

何重にも罠が仕掛けられていたあの飛竜の巣から生き延びていたことにロディルは半ば呆れてすらいた。

「ヴァーリと2人で……私を騙したんですね」
「プレセアか。お前がその小さい体でクルシスの輝石を作り出してくれていれば、もっと大事にしてあげたのですがねぇ」
「プレセアはお前の道具じゃない!」
「レイラ様、あのままクルシスの輝石を完全に目覚めさせてくれたら、わしがもっと有効に使ってやれたものを」
「……こいつ……!」
「……消えなさい!!」

プレセアやレイラを目的のための道具としか見ていない。その物言いは彼女たちを激昂させた。

「フォッフォッフォッ。まあ、そう熱り立たずに投影機を見なさい。これからちょっとした水中ショーを見せよう」

ロディルが指し示した投影機に映し出されたものは、あまりにも無惨な光景。
先ほど解放された人たちが、外から流れ込んできた水に狼狽えている。
地下に施設を拡げているこの牧場では、水から逃れる手段がない。為す術もなく、彼らが呑み込まれようとしているのを見るしかなかった。

「ひ、酷い!」
「みんなが……殺されちゃう!」
「……下衆が!」

皆、ロディルへの怒りが膨れ上がる。

「てめぇ! やめろ! 今すぐ海水を止めるんだ!」
「無駄だ」

ロディルは相変わらず嘲笑う。

「お前達がここに乗り込んできた訳は分かっていますよ。大方、我が魔導砲を無力化しようというのでしょう。残念でしたねぇ。魔導砲へ続く通路は海水で満たしてあげましたよ!」
「そんなことのために牧場の人たちを見殺しにしたの! 許せない……」

皆、ロディルへの憤りを膨らませる。

「劣悪種の命など知るか! 魔導砲はクルシスの輝石があれば完成する。あのトールハンマーさえあればユグドラシルもクルシスも恐るるに足らんわい。目障りな救いの塔も魔導砲で崩れ落ちるだろう」
「救いの塔を破壊して一体何になるんだ」
「くくく。お前達のような下等生物には関係の無い話だ。私はようやくクルシスの輝石を手に入れたのだからな!」

ロディルの余裕はどうやらここから来ているらしい。

「どれ。まずはわしが装備して輝石の力を試してやるわい」

手にしたクルシスの輝石を、装備してみせたロディルは、醜悪な化け物の姿になってこちらを殺そうとしてきた。

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