報告

シルヴァラントベースの前で、ミトスが立ち止まる。

「ボク、ここで待ってます。しばらく……1人になりたいから」
「ミトス……」

ジーニアスが申し訳なさそうに名前を呼ぶと、ミトスが首を横に振る。

「あ、違うよ。笛のことじゃないんだ。ごめんね」
「……分かった。危ないから、ここを動くなよ」
「はい」

この場から離れることの危険さを、ミトスも理解しているだろう。素直に応じた。

「じゃあ、ミトスが借りたレアバードも返しておきましょうね」
「……え? あ、うん。お願いします」

何故かミトスは困惑するが、素直にウイングパックをリフィルに預けた。

ユアンの部屋に入れば、待っていたのはユアンひとりだけ。

「……来たか」
「ユアンさん……ボータさんが……」
「……死んだのか」

言葉を詰まらせたコレットに、ユアンはその先をあっさりと察した。

「ああ……最後に任務を果たしたって俺達に伝えてくれって」
「そうか……」

ユアンは一度目を閉じるが、すぐに開き、事も無げに続けた。

「では空間転移装置を作動させよう。好きに世界を行き来するがいい」

淡々と事務的に伝えるユアンに、ロイドが詰め寄る。

「それだけか!? ボータは命と引き替えにレネゲードの作戦を……」

それをリーガルらが諌める。

「ロイド! ……ここから先は我らが口を挟むことではない」
「こいつはずっとあのボータとツラ突き合わせてきたんだ。俺達が何を言っても仕方ないさ」
「ユアン様も、思うところがない筈がない……きっと、それを表に出さないだけで……だから、ね、ロイド……」

ここはそっとしておくべきだと、レイラもやんわり止める。

「……分かったよ」

渋々といった体だが、ロイドはこれ以上言うのはやめておいた。

「そうだわ。私たちの仲間があなたたちからレアバードを借りたようね。お返ししておくわ」
「……? 我らが? レアバードを? そんな筈は……」

リフィルの言葉に、ユアンが面食らったように考え込む。

「どうしたんですか?」
「……いや、何でもない。預かっておこう」

リフィルからユアンはウイングパックを受け取るが、未だ腑に落ちない様子だ。

「……ユアン。悪かった……」

ロイドは最後に、これだけ告げて部屋から去っていった。

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