風の精霊
再び訪れたバラクラフ王廟。
現れたのはシルフ三姉妹。3人で風の精霊シルフの役割を果たす、特異な精霊。
「あなたは召喚士……ですね? 私たち三姉妹は既にミトスと契約を交わしています」
「我はしいな。シルフがミトスとの契約を破棄し我と契約することを望む」
「なるほどね〜。ようやく次の契約者って訳か」
「じゃあ、あなたたちの力を試させて貰うね!」
彼女達はそれぞれあちこちの方向へ散り、皆を囲むように襲ってくる。
三姉妹とだけあり、息の合った連携は今までにないものであり、苦戦を強いられた。
それでも勝利を収めたのはこちら側。連携なら負けてない。
「うわぁ。強いんだね!」
「ボクも気に入ったヨ」
「いいでしょう。さあ、誓いをたてなさい」
3人ともに力を見せ、納得させることができた。心なしか嬉しそうにも思える。
「2つの世界が、お互いを犠牲にしなくてもいい世界を作りたい」
「分かりました。どうかあなたたちは、私たちを裏切らないでくださいね」
シルフからのその願いは、少しだけ切実で、哀しそうに見えた。
契約が成され、対となる精霊、ノームが現れる。
「おおー、シルフ! 4000年ぶり〜」
「お久しぶりですね。どうやら、私たちの間に流れていたマナが分断されたようですね」
彼らは再会を喜ぶ。少し前のイフリートとセルシウスらの様子とはまるで違う。風と地、互いになくてはならないもの同士ならではの関係なのだろう。
ノームは皆の方を振り返る。
「しばらくすると、地震が起きるぞ。マナの楔を引っこ抜いたようなモンだからな」
「ま、そういうことさ」
「みんな、気をつけてね。それじゃ、また〜」
「んじゃ、またなー」
警告を済ませると、彼らは姿を消し、シルフは契約の指輪に。
「とうとうあと1つか……」
残すは闇と光。楔は1つ。
コレットが不安げな様子になる。
「シルヴァラントとテセアラは永遠に交流できない世界になっちゃうのかな?」
「だとしても、やるんだろ?」
「……ああ」
ロイドの決意は堅い。
「でも、契約した途端にレアバードが機能しなくなったら、ボクたち、どっちかの世界に残らなきゃいけないってことだよね?」
「ミズホの民はシルヴァラントへの移住を希望してる。何とかならないのかねぇ」
ただ切り離しておしまい、ではない。切り離した後、どうするのかも考える必要がある。
「そうね。最後の精霊と契約する前に、切り離した後の世界について調べておいた方がいいわね」
「その上で、どっちに残るか……決めなくてはならない……」
レイラはシルヴァラントにもテセアラにも何も残してはいないけれど、他の皆はそうはいかない。家や立場がある。
話していると、地震が起こる。ノームの警告通りだけど、想像していたより激しく、起きるのが早い。
「……これは……以前より激しくなっていないか?」
「マナの流れを分断してから地震発生までの時間も短くなっています」
「世界が……2つに分かれようとして、もがいてるのかもしれないな」
「……世界をいい方向に進めようとしてる筈なのに……何だか、滅びそうな気がしてくる……」
「考えすぎだって。大丈夫だよ」
地震はあまりいいものを連想しない。不吉な予感がしてくる。
杞憂で済めばいいのだが、世界が関わる以上、不安は拭いきれない。