救出、そして復帰
シルヴァラントの街々を巡っていると、イズールドで探していた人を見つけた。
「よし、今度は逃がさないぞ!」
海岸で、クララが冒険者たちに追い詰められていた。
「待て!」
既のところで止めて、彼らの間に割って入る。
「……先生、頼む!」
「分かっていてよ」
リフィルは当然というように、クララへ治癒術を掛ける。最高の治癒術は怪物化した人間にも効果を見せた。
化け物の姿から戻った女性に声を掛ける。
「大丈夫か?」
「クララさんね? 私の声が聞こえるかしら?」
クララはほっとしたように返事をする。
「はい……、はい! ありがとうございます! やっと元の姿に戻れた……!」
「良かった! ホントによかった……!」
互いに歓喜する中、状況を掴めない冒険者たちが驚く。
「な、な、何だ? どうして怪物が人間に?」
「ばっかじゃないの。元々人間だったんだけどディザイアンに怪物にされてたんだ」
「間に合ってよかった……」
彼らも知らなかったから仕方ないけど、後少しで取り返しのつかない事態になっていたかもしれない。
「本当に何とお礼を言えば。怪物だった頃のことは薄らとしか覚えていませんが、それでも皆さんがパルマコスタを救ってくださったことは覚えていますわ」
「早く元気な姿をパルマコスタの人たちに見せてあげましょう」
クララをパルマコスタの総督府まで送り届けると、ニールから礼を言われる。
「クララ様を救っていただきありがとうございます」
ドアもクララのことを最期まで案じていた。彼女を救えて、こちらも肩の荷が降りた気分だ。
「クララ様のことは、しばらく街の者には伏せておくつもりです。事情が事情ですから……でも、きっといつか皆分かってくれると信じています」
死んでいたとされていた者が生きている。それは街の人たちを不必要に驚かせてしまうことになる。ニールはそう判断し、クララもそれを承知した。
「必要がある時まで私は陰ながら街のために尽くし、亡き夫に代わりこの身を捧げるつもりです」
夫も娘も失い、自らも辛い目に遭ったのにそれを乗り越え気丈な態度の彼女に、パルマコスタは安泰だと感じ、こちらも安心させられる。