暗中模索

精霊との契約もほとんどが終わった。残る楔は1つ。光と闇。
ルナとアスカは特殊な事情が絡む故後回しにし、テセアラへ戻り闇の神殿へ向かった。が、

「うわぁ……真っ暗だねぇ……」
「闇の精霊の力のようね。このあたりに強く影響しているんだわ」

入り口から射し込む光はあるが、それも一歩入ればかき消される。それほど強烈な闇は広がっている。
いくら視力を強化しても一歩先が見えない。

「それにしても暗すぎるだろ。……うわっ!」

ロイドが少し歩き出したと思ったら、前が見えず転んでしまう。

「このままじゃ先に進むのは無理よ」
「精霊研究所に行ってみよう。前にここを調査したらしいから、この闇を晴らす方法を知ってるはずさ」
「そうね、そうしましょう。さあみんな、外に出るわよ」
「はーい」

しいなの提案で、引き返すことになった。順々に、慎重に外へ出る。

「お、俺さまの、足が……」

ゼロスが何か言っていたがレイラの知ったことではない。

メルトキオに入り、精霊研究所を目指す道すがら、思わぬ人物と遭遇した。

「クラトスッ!」

ロイドは警戒するが、クラトスは特に意に介さず、まっすぐプレセアの前に立った。

「神木は……オゼット近隣にしか生息しないと聞いたが、間違いないか?」
「は……はい……」

まさか自分に、そんなことを聞かれるとも思わなかったプレセアは困惑しつつも、答える。

「では、もう神木は存在しないことになるな」

オゼットは滅ぼされた。周囲の森にもその炎は移り、神木も燃えてしまっている。

「……私が伐採したものが教会に収められています」
「やはりそれだけか。……やむをを得んな」

僅かに溜め息を吐きクラトスはその場から離れようとする。
それをロイドが引き止めた。

「待てよ! クルシスの連中がどうして神木のことなんかを気にするんだ」
「必要だからだ。……他に理由があるか?」
「何のために!」
「今はお前に話す必要を感じない。
それよりもロイド、お前達が行っている精霊との契約は……やめるのだな」
「……言われて、やめると思うのか!?」
「どうなってしまうのか予測のできない行為は危険だ。取り返しのつかない事態になるやも知れぬ」

クラトスの主張を聞いて、レイラは内心どき、とした。今まで漠然と感じていた不安感を、この時になってようやく理解した。

「それでも! 世界を同時に救う方法が他にないなら、やるしかない!」
「……焦るなよ、ロイド」

ムキになるロイドをこれ以上止めるでもなく、それだけ告げて去って行った。

「……どういうことだ?」

相変わらず真意の全く見えないクラトスの行動に、疑問は増えていくばかり。
レイラには、ほんの少しだけ、見えた気がした。

「……本当に、世界を救えるのかどうか確かじゃない。だから、確かだと分かるまで待つべき……ってことだと思う」
「そんなに待っていられないだろ。それに、嘘を言ってでもやめさせようとしてるのかもしれない」
「……本当に、本当に世界を救える……? 精霊ですら分かっていないのに」

レイラはクラトスが去って行った方を振り返った。

[ 147/226 ]
prev | next
戻る