牢獄

闘技場のフィールドの中央に立てば、相手側のゲートの檻が上がり、相手が入場する。
腕に覚えのある戦士たちがこぞって集まっているのだ、一筋縄ではいかない相手が揃っている。
まず狙うは魔術師から。早速詠唱を始める魔術師の元に、前衛をかいくぐり真っ直ぐ向かう。

「やらせない!」

斬りつけて詠唱の妨害を狙う。
すぐさま前衛の剣士がレイラに斬りかかろうとしてくる。揃いも揃って背中からやってくる。

「閃空裂破!」

まとめて回転斬りで斬り伏せる。

「風迅剣!」

さらに目の前の魔術師を突き追い打ちを。これで守りが脆い魔術師は動けず、脱落だ。
技の反動で一瞬動けない隙に斬られかけたが、ギリギリ振り返って防ぐのは間に合った。

「ぐっ……」

受け止めた剣越しの衝撃が意外と馬鹿にならない。1人で戦っている時に自分に治癒術をかけている間はない。ダメージは最低限に留めておかなくては。

「はっ! せやっ!」

敵の攻撃の間をついて斬りつける。

「これで……おしまい!」

どうにか、相手を撃退して勝利を収められた。
観客席から拍手と歓声が沸き上がる。それを背に、控室へ戻っていく。
ただの腕試しなら観客に応えてもよかったけど、そんな場合じゃないから。

あらかたの試合が終わり、控室はすっかり人が減っている。
スタッフも忙しなく動いていて、誰もレイラを気に留めていない。
この隙に、とレイラは牢獄へと続く階段を降りていった。
ケイトのいる牢を見つけ出す。

「あなたは……」

ケイトは突然現れた少女に困惑を見せる。

「ロイドの仲間です。あなたを助けに来ました」
「そう……でも、いいわ」

ロイドのことを言えば、彼女は合点がいったようだが、牢から出ることに首を横に振ろうとする。

「みんな、自分たちのせいであなたがここにいることに責任を感じています。逃してくれた恩返しとでも思って……」
「分かったわ……」

どうにか説得し、ケイトを連れ出せた。

「どうもありがとう……」

闘技場の外で皆と合流できた。ケイトは未だ外にいることに抵抗と困惑を拭いきれない様子だ。

「しかし助けたはいいが、この後彼女をどうするんだ?」

まさかサイバックに戻すわけにもいかない。

「家族はいないのか?」
「母は亡くなったわ。父は……駄目」
「だめって、どうして」

ケイトはその問いには答えず、代わりに懇願をする。

「……お願いがあるの。私をオゼットへ連れて行って」
「オゼット? あそこは今廃墟になってる。それでもいいのか?」
「ええ。……あそこは私の故郷なの。お願い」
「分かった」

滅んだとはいえ、故郷なら、そこに連れて行くべきだろう。

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