思わぬ再会
引き返すその道すがら、こちらへ向かってくる獣のような影が見えてくる。
「あれって……」
少しずつその姿がはっきりすると共に、信じられない物を見たかのように目を見開くレイラ。
「ノイシュ!」
「――おーい!」
こちらに向かって駆けるのは緑と白の毛並みの獣は紛れもない、ノイシュだ。
そして、その背に乗りコレット達を呼んでいるのは――
「ジーニアス!? あなた、どうしてここに!?」
「よ、よかった……追いつけて……」
昨日、別れた筈の少年の姿に皆驚く。
余程急いでいたのか随分消耗した様子で、リフィルが慌てて水筒を取り出す。
そんなジーニアスをよそにノイシュはクラトスの元へ寄っていった。
「……っ! ロイドは!? ノイシュとあなたがいるのに、ロイドは!?」
ジーニアスとノイシュがいるのに、ロイドがいないなんてことは決して有り得ない。レイラが問い詰めると、ジーニアスは必死に答える。
「それが、ロイドが大変なんだ!」
ジーニアスはこれまでの経緯を掻い摘んで話し始めた。
ジーニアスは以前より人間牧場にいたマーブルという人に会っていたという。不可侵契約のことは百も承知であったけど。
神託の日、ロイドと共にその人に会いに行ったが、マーブルが痛めつけられているのを我慢できず助けたことで、牧場に行ったことがディザイアンに知られてしまった。
その報復としてイセリアを襲撃されたのだ。マーブルも、死んでしまった。
そのことでロイドとジーニアスは村を追放された。
2人はコレット達を追いかけてトリエットまで辿り着くも、ディザイアンはロイドを捜して、指名手配になった。
コレット達の行方を掴み、追おうとしたその時、ディザイアンの襲撃に遭い、ロイドは連れ去られてしまったのだ。
「そう……」
「姉さん、ごめん……勝手なことをして……」
ジーニアスは叱られるかと、目を閉じる。
「過ぎてしまったことは仕方ないわ。それより今は……」
「ロイドを、助けに行かないと!」
コレットが拳を握り締め言った。
「ロイドが連れて行かれた場所は分かっていて?」
「うん。途中まではボクも連れてこられたんだ。あいつらが狙ってるのはロイドだけってことで、見逃されて……」
ジーニアスはこっちだよ、とトリエットとはまた違った方角へ向く。
「そういえばジーニアス、あなたの右手にあるそれは……?」
ロイドの捕らえられた場所へ向かう道すがら、リフィルが疑問を挟む。
ジーニアスの右手の甲には今までなかったもの――宝石のようなものが付いている。レイラとコレットには見覚えのある代物だ。
「これ? これはエクスフィアって言う物なんだ」
「どうしてジーニアスがエクスフィアを使ってるの?」
「色々……あったんだ」
コレットの疑問に答えながらジーニアスの顔がにわかに沈む。リフィルがこの話は後にしよう、と打ち切った。