約束

夜明けと共に、皆目を覚まして行く。
ずっと作業していた2人も完成したようで、皆の目覚めを待っていた。

「ジーニアス。これを……」

皆目を覚ましたことを確認し、プレセアは笛をジーニアスに託す。
それを確認し、ジーニアスは頷く。

「ばっちりだよ! ロイド、プレセア!」

たったの一晩で見事な笛を作り上げた2人の手腕に感心するばかりだ。ロイドに関してはある意味慣れのようなものもあるかもしれない。ギリギリになってからプレゼントだったり何かしらの製作に取り掛かっては完成させてしまうのをレイラも知っている。

「最後の仕上げだ! ジーニアス! しいな!」
「うん」
「はいよ!」

ジーニアスの奏でる音色は、シルフの風に乗り、どこまでも、遥か遠くまで。

「あれを見ろ!」

音色に惹かれてか、金色の鳥が降り立ってきた。

「これが……アスカ……」

対面してみると確かに分かる。これは精霊だと。アスカで間違いない。

『私を呼ぶのは誰?』
「アスカ! あんたの力が必要なんだよ! あたしと契約をしてくれ!」
『契約……ルナは?』

ルナがアスカを求めるように、アスカもルナを求めた。

「ルナとはまだ契約してねぇけどよ。頼むわ、マジで」
『私はルナと……ルナと一緒でなければ……契約はしたくない』

シルフの姉妹ともまた異なる、強いつながりが彼らにはあるのだろう。精霊としては、異質な類の。

「じゃあ、ルナと一緒に契約するから」
『……では、時が来れば私はルナの元に。それで……』
「ああ! それでいいよ。ありがとうアスカ」
『……ではその時に……』

確かに来ると、約束し、アスカは再び飛び立った。

「しいな、あれでよかったのか?」
「契約はしてくれるって言うんだ。焦って今する必要はないだろ?」
「ふむ、確かに。ルナとアスカは共に光に属する精霊。楔としてはルナにその役割があるのなら、無理にここでアスカと契約しなくても良いだろう」

重要なのはルナだ。アスカとだけ契約を無理にすることはない。

「後はルナさんの所に行って改めて契約するだけですね〜」
「結果、2人の精霊から同時に試されることになるわね……仕方のないことだけど……」
「……厳しそうですね」

それぞれは通常の精霊1体に匹敵する力を持つのだ。それが同時に2人、となれば勝つのは易くないことだろう。精霊としての在り方が特別なようだから、文句を言うわけにもいかない。

「ま、なるようにならあな」
「よし! 行こうぜ!」

皆はリンカの木を後にした。

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