結論
宿で横になりながら、レイラは思考に耽っていた。
未だ、世界を切り離すこと自体への不安は消え去らない。明日には、切り離すのに。
自分ひとりが不安なだけなら、単なる考え過ぎで済ませられたろうに、クラトスの忠告がレイラの心に影を落としていた。
(人に対して言う前に、自分の問題をどうにかする方が先だった……)
この土壇場で、やっぱり怖いからやめよう、などとはとても言えない。
ここまで来たら、やるしかない。何が起きても、受け止めるしかない。
日が登った頃合いに目を覚ます。
これから戦う相手は今までとは違う。厳しくなることを予想して、支度は万全に。
そして、ロイドとコレットの待つ場へと向かった。
「ごめんね、一緒に待たなくて」
「いいって。レイラも何かやり残したことがあったんだろ」
何も言わずにどこかへ行ったことに対して、特にお咎めがあるわけでもなかった。
「みんなの結論を聞かせてくれ」
全員、集まったことを確認して、ロイドが全員を見渡し声をかける。
誰が残っても大丈夫だという意志が篭った声。
「ボクは……シルヴァラントへ帰る。ミトスも分かってくれたし。……それに、ボク、ロイドにずっと付いていくと約束したからね」
ジーニアスはミトスともっとよく話し合って、別れを済ませてきたのだろう。離れてしまうだけで、友情が消えるわけではない。
「私もよ。シルヴァラントはこれから復興する世界だわ。教師が必要だと思うの」
自分の研究をする学者より、人に教える教師であることを決めたリフィル。世界を切り離した今後を見据えて。
「あたしはもちろん、シルヴァラント組さ。ミズホの皆とは別れを済ませてきた」
あっさりと言うしいな。非情なのではなく、自分のやるべきことを定めている。
「会社はジョルジュに任せてきた。私はアリシアのような犠牲者を生まないためにも、ロイドに協力したい。我が力は微々たるものかも知れぬが……」
自分の役割を、信頼できる者に託して、誰かに託せない決意を取ったリーガル。
「私は……正直言って、どちらにしていいのか分からない……です。ただ……ロイドさんたちがいなければ私の時間は戻ってこなかった……だからロイドさんたちに……私の新しい時間を預けます」
未だ迷いや未練を捨てられない。けれど恩に報いるために、付いていくと決めたプレセア。
「ゼロスは……?」
半ば呆れたように溜め息を零すゼロス。
「……な〜んだよ。結局皆わざわざ好き好んで衰退世界へ行くのかよ」
「それじゃあ……!」
「世界が分断されれば神子はいらなくなる。したら、俺さまは晴れて自由の身だ。シルヴァラントのまだ見ぬハニー達に愛のプレゼントよ」
こんな時にも軽口を言って本心をはぐらかすゼロス。世界を切り離したその後の動向の監視だとか、流石にそのまま言えないにしてももっとそれらしい理由を考えなかったのか。とはいえ、彼の普段の素行からしてこちらの方がらしいと言えばらしい。
「みんな、一緒なんだね!」
「そーゆーこと」
コレットの顔が輝く。やっぱり仲間と別れることに対する不安はあったのだろう。今、その心配もなくなったが。
「よーし! みんな行こう! 世界を切り離すために!」
「未開の野蛮人を文化人にしてやらねーとな」
「未開の野蛮人とかゆーな!」
ゼロスが余計なこと言うから、ちょっと締まらない出発になってしまった。