止める声

マナの守護塔。かつて失われていくコレットのことを案じながら登った塔を、今度はコレットが苦しまない道を探した果ての終着点として登る。
そして、祭壇まで目と鼻の先、というところで、立ち塞がられる。

「待て!」
「クラトス! 邪魔をするな!」

行く手を阻んだのはクラトス。今までにない焦りが伺える。

「そうはいかん! 今、デリス・カーラーンのコアシステムが答えを弾き出した。精霊と契約をすれば、大いなる実りの守護は完全に失われてしまう!」
「それこそ我らの願うところだ!」

割って入った声の主と、雷。クラトスがそれを避けたことで、道が開く。

「分からないのか! お前の望む結果は得られん!」

ユアンのやろうとしていることを知っているのか、特に何も訊くことはなく、ただ止めようとしている。

「黙れ! この機会を逃すと思うか!」

当然、ユアンはそれを曲げることはない。彼の悲願であっただろうから。このために、決して小さくない犠牲を払ったから。

「ロイドよ!こいつの相手は私に任せろ! お前達は一刻も早く、光の精霊との契約を済ませるのだ!」

ユアンがクラトスに邪魔されぬよう抑える。その間を縫って、祭壇へ。

「…………」

転送装置に足を踏み入れようとして、レイラは足を止めた。
ただの、大いなる実りを発芽されたら困るクルシスとしての言葉とはとても思えない。本当に、取り返しのつかない事態になるのではないか。
クラトスの方を振り向く。彼の苦々しい形相は、本当に、真実を伝えようとしているのではないか。

「何をしているレイラ、グズグズするな!」

ユアンが行きあぐねているレイラを見咎める。
クラトスの言葉をレイラが無視することができないと、その事情を知っているからか、苛立ちが滲むような声色。

「……ごめん、なさい……」

その謝罪は誰に対してか、レイラ自身も曖昧なまま、転送措置に乗り、ロイドたちの方へ、祭壇へ転移する。

少し遅れて祭壇に到着すると、しいなが精霊と向き合っているところだった。

「我が名はしいな。ルナとアスカがミトスとの契約を破棄し、私と新たな契約を交わすことを望んでいる」
「アスカは?」

ここに居ないアスカの所在を訊ねるルナ。

「来るはずさ。約束したからね」

それを聞いて、ルナは納得したようだ。

「そうですか……。それならばいいでしょう。あなたに力を貸せるものか、その力を試させてもらいます」

不安げな様子から一転し、精霊らしい凛とした空気に変わる。
ルナの言葉と共に、アスカが降り立ち、ルナを守るかのように間に入る。
2人の精霊。そのプレッシャーは、これまでの比ではない。

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