帰郷

ロイドたちが戻ってきたことで自警団は困惑していた。だが、村には入れてくれた。控えめに、迎えの言葉を告げて。
村に入って、まっすぐコレットの家に向かった。
当然、ファイドラはコレットが帰ってきたことに驚いていた。
その事情を、ファイドラにありのまま話す。クルシスの正体、その目的、もう1つの世界テセアラの存在、世界再生の実態、何もかも。

「……そうじゃったか。クルシスの天使様が……ハーフエルフじゃとは……」

ファイドラの心中は、驚きや落胆など、複雑なことであろう。だが、それを静かに、飲み込み、理解してくれた。

「……このことは……みんなに言わないでくれ、ばーさん。きっと混乱して、大変なことになっちまう」
「そうじゃな。……救いの塔も消えてしもうたし。今、そんな話はできまいよ」

ファイドラはこちらの方針に頷く。だが、思いもよらぬことがその口から漏れ出る。

「救いの塔が消えた!?」
「あの大地震の後……といってもイセリアに大きな被害はなかったのじゃが、とにかく東の空を見たところ……巨大な化け物と共に、塔も消えていたんじゃ」
「どういうことなんだ!」

シルヴァラント出身の面々に動揺が走る。

「……分からぬ。元々神子は、再生の儀式を完全には済ませていない。塔の出現を司るクルシスのコアシステムに、狂いが生じたのだろう。実害はない」

世界再生があと一歩で完遂する所で、止めてしまっている。もう随分長いこと止めてしまってるし、システムが狂ってもおかしくはない。だが――

「いえ……シルヴァラントの民にとっては、大きな打撃よ。大地震で大地が切り裂かれた上、救いの象徴が消えたとなれば……神子の責任が追及されるわ」
「何でよ。今までの神子だって失敗してるんだろ」

テセアラの面々は、シルヴァラントが置かれている状況にピンと来ていない様子だ。

「今までの神子は失敗と引き換えに命を落としておる。しかしコレットは……生きてここにおるのじゃからな……」
「大失敗した、逃げた神子……そんな責任が、これから、ついて回ってしまう……」

これからコレットに降りかかる責任を思い、目を伏せる。

「……人は……傷付き疲れた時、誰かに責任を押し付けずにはいられぬのだな……」
「コレットさんが……可哀想です」

みんな、コレットを哀れむ。彼女ひとりに何もかもが降り掛かってしまうことに。

人々の様子が気になり、みんなで村を見て回ることにした。

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