休息

コレットの容態について、ひとまずは落ち着いたようだ。
クルシスの輝石についてはドワーフの方が詳しいからと、ダイクにコレットを看てもらうことになった。
だが、ダイクは技術を捨てて自由を選択したドワーフ。地上暮らしの彼にクルシスの輝石のことは知る由もなく。

「いくらエクスフィアの進化系だとか言われても、クルシスの輝石のことはさっぱりだ。その、テセアラとかいう所のドワーフに訊ねた方がいいかもしれねぇな」

お手上げだと、申し訳なさそうに言う。

「そうか……。親父でも、分からねぇか」
「すまねぇな。役に立てなくて……。せめて今日はゆっくりしていくといい」

話に決着がついたところで、クラトスが踵を返す。

「……私は失礼する」
「お、おう……」

ロイドが家を出ようとしていくクラトスを追いかける。
互いの目的が完了された以上、もうクラトスがここにいる道理はない。
束の間の共闘が終わってしまった。それが、何だか名残惜しい。

母の墓の前に座り込む。何度か花を供えたことはあったけど、娘としてこの場にいるのは初めてで、妙な心地だ。
ロイドも来て、一緒に祈った。

「……私がしっかりしていれば、よかったのにね」

ふと、そんなことが漏れた。

「コレットの異常に早く気付けたかもしれない、原因が分かったかもしれない……そんなことばっかり、浮かぶよ」
「いや、コレットのことはしょうがないよ。俺だって……気付けなかったんだ」

歯痒い気持ちは、みんな同じなのは分かっている。でも、

「剣も魔術も……知識も、何もかも半端で、肝心な時に役に立たない。半端に持ってるせいで、余計にもっとしっかりしていればって、思ってしまう」
「それはレイラのせいじゃないよ。半端者なのは俺だってそうだ。俺だけじゃない、みんな……そうなんだと思う」
「うん……みんな、悩んで、苦しんでるのは分かってるよ」
「だから、無いものを求めてもしょうがないんだ。自分にできることを探さなきゃならないんだよ。今までみたいに……これからも」

今までだって、できることを探して、できることをやってきた。結果は凄惨な有様だったけど。

「……ロイドに諭される日が来るなんて思わなかった。そうだね、今までみたいに、探していくしかないよね」

レイラの顔に笑みが浮かぶ。この、目の前のことに対する懸命さが、ロイドをここまで成長させた要因だろう。
レイラも、いつまでも止まったまま、後ろばかり向いているわけにはいかない。

[ 169/226 ]
prev | next
戻る