調査
資料館で、ミトスと共に資料を漁っていく。
資料を見ていたしいなが声をかける。
「ちょっと、これを見とくれよ」
「どうした?」
「ミトスの仲間に体中が結晶化する病になった人がいるらしいよ」
「それって、コレットと同じじゃない?」
病と聞いて、ミトスが訊ねてくる。
「コレットさん……病気だったの?」
「う、うん。ちょっとね。……その人はどうなったの?」
過去に同じ症例があっても、それだけでは意味がない。
「……治療されたみたいです」
「それはアルテスタ殿の言う通り、治す方法があったということだな」
「……失われた技術でなければいいのだけれど」
「それで、治療方法は!?」
目を通しても、具体的な治療方法が書かれているはずもなく。
ただ、それらしい記述はあった。
「……ユニコーンが乙女を救ったって書いてあるけど。これって、ユウマシ湖で手に入れたユニコーンの角のことかい?」
「それって、リフィル様が新しい治癒の術法を覚えたっていう角か〜?」
「……だとしたら、あの治癒術でコレットをどうにもできないことは既に分かっているわ」
「ユニコーン自身が……必要なんでしょうか」
「そういえばあの時、確かユニコーンは、マーテルの病を治すために生かされていた……みたいなことを……」
「それで、マーテルとコレットは同じ病じゃないかって言ってたよね……」
ユニコーンの言葉を思い返す。ユニコーンが言っていたのは、このことだったのだろうか。
「クラトスの言ってた通りだ。ユニコーンの言葉を思い出せって……あいつ、そう言ってた」
「クラトスさんって……一体何者なのかな」
「何言ってんだよ。何者もへったくれも、結局は裏切り者だろ? 信用しちまって、後で痛い目見たらどーすんのよ」
一時は共闘したとはいえ、まだ敵同士には変わりない。
「可能性はゼロじゃない。嘘か本当か疑う前に試してみるだけだ!」
「……そうさ! やるだけやってみるしかないよ!」
ロイドは、わずかでも可能性に賭けてみることに決めたようだ。
「ロイド……って、強いんだね」
「そうか?」
「もしかしたら、それは罠で向かう先には暗闇しか待っていないかもしれないのに、どうしてそんな風に前向きでいられるの?」
「仲間が助けてくれるからじゃないかな。1人だったら、俺も背負う物の重さに潰れてたと思う」
何かあっても仲間が助けてくれるという安心感は、行動を起こす源になってくれている。
「ボクも……そんな仲間が欲しかったな」
「ミトスはもう、俺たちの仲間だろ?」
「そうだよ! ロイドの仲間じゃないか。バカが伝染るかもしれないけど」
「あのなー! お前なー!」
「アハハハハハ! うん……本当に羨ましいや」
悪ふざけしあうロイドとジーニアスをミトスが羨ましげに見る。
ミトスはきっと、仲間と言われても旅ができないことで疎外感を感じることもあっただろう。
「でも……カーラーン大戦のことは……これ以上どう調べたら……」
「ボク、ミトスやカーラーン大戦の資料の大部分はテセアラ王室が編纂して保管しているって聞いたことがある」
「確かに……カーラーン大戦時代、王室とミトスは色々因縁があったみたいだからな」
「メルトキオね。教皇の息がかかっていて危険だわ」
「この際、贅沢は言えないよ」
コレットのためだ。危険を冒す価値はあるだろう。
「そうだな。俺たちはメルトキオに向かうけど、ミトスは帰った方がいい。とりあえずミトスを送って……」
「ボクなら大丈夫。1人で帰れるから」
「でも……」
「大丈夫。それより時間がないんでしょう? それに城に潜入するんだよね。そっちこそ……気を付けて」
「……ああ。分かった。よし、みんな行くぞ!」
ミトスと別れて、メルトキオへ向かう。
「……ロイド」
「どうしたんだ? レイラ」
「……コレットのことが落ち着いたら……大事な話をする」
決めた。ロイドはもうここまで強くなっている。きっともう、話しても大丈夫だろう。
「大事な話? それって今じゃダメなのか?」
「うん……本当に大事なことで……もしかしたら、酷く混乱させてしまうかもしれない。今、大事な時にそんなことさせられないでしょ? だから、落ち着いてから話すね」
「そっか……分かった。すごく気になるけど、今はコレットの方が大事だもんな」
「うん。そういうことだから」
心の準備もさせておくために、予告しておく。
混乱するかもしれない、動揺して、認められないかもしれない。
それでも、いつかは知っておかないといけないことだから。