再臨スピリチュア

「くそ! 逃げられたか……」

城内に入るも、教皇を見失ってしまった。
背後から、兵士が襲ってくる。

「み、神子! すみません! ご覚悟を!」

兵士の攻撃を避けようとコレットが羽を出し浮くと、元々へっぴり腰の兵士は腰を抜かしてしまった。

「天使だ……! 天使が降臨した!」
「スピリチュアの再臨だ!」

スピリチュア伝説。そう聞いたゼロスがそれに乗る。

「見ろ! お前達の神をも恐れぬ行為が、クルシスからの使いをもたらしたのだぞ」

当然、皆の頭に疑問符が浮かんだ。

「神子! ではやはり……!!」
「そう。彼女こそ死と破壊の天使スピリチュアの再来だ!」
「お、お許しを……天使様!」
「あ……あの……えっと……どうしよう」

兵士はすっかり頭を下げているが、当のコレットは困惑している。

「おい、どうなってるんだ」
「いいから俺さまに調子を合わせろ。
天使様、この者たちの処遇は如何致しましょう」

何となく状況を把握したロイドが、コレットに耳打ちする。

「……コレット、殺すって言え」
「で、でも……」
「大丈夫、本当に殺すんじゃなくて、驚かすだけだから」
「そうそう。偉そうにな」
「えっと……死になさい」

コレットからすると気が進まず棒読みになったが、その淡々とした響きは兵士の恐怖を上手く煽れたようだ。

「お……お許しを!! どうか!!」
「天使様! 彼らの命、この神子に免じてお助けくださいませ。私は天使様に仇なす者を倒し、再び神子としてマーテル様の教えを広めて参ります故どうか……」
「許すって言ってやれ」
「あ、はい。……許しましょう」

そのまま仰々しく、今の状況を打破するための命令を下していった。

「聞いたな! 天使様は神子こそが教会の聖なる意思だと認定された。即刻引き返し、我に仇なす教皇とその私兵、教皇騎士団を捕らえるのだ!」
「わ、分かりました!」
「神子とその仲間への手配は即刻撤回せよ!」
「必ず! みんな神子の命令に従うのだ!」

兵士は慌てて、命令に従うため指示を出し走り出していった。

「すごい……! みんなゼロスの言うことを聞いたよ!」
「スピリチュア伝説に助けられたな」
「シルヴァラントの神子スピリチュアと関係があるのかしら?」
「スピリチュアは、マーテル教会の教えを定着させて信仰させるための存在だったらしいです。なので内容は違いますが両世界に伝説があるそうです」

シルヴァラントでは最初の神子として名を残し世界再生のシステムを人々に信じさせた。そしてテセアラでは――

「そのへんの詳しい話は教会の資料でも読んでくれ。とにかくスピリチュアは神子を蔑ろにした国王を殺して神子を救ったことで有名なんだ」
「ふーん。今の状況と似てるね」
「これでもう追われることはないんでしょうか」
「教会関係は大丈夫だろ。後は陛下だな」
「とりあえず、毒を盛られていたことだけは知らせないとな」

後は国王の懸念を解決すれば、古代大戦の資料を見れて、追われる心配も完全に消える。一石二鳥だ。

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