神木と秘密

指名手配は撤回され、封鎖されていた門も開放され、メルトキオを堂々と歩くことができるようになった。
町を歩いていると、クラトスが城から出てくるのを目撃した。

「あいつ……何で城から……」

テセアラをそこら中うろついて何をしているのか、未だ分からない。
調べるため、クラトスの動向を探ってみることにした。

「では神木は確かに街の外へ運んでおきます」

城の者と何やら話しているところをロイドが呼び止める。

「クラトス!」
「……こんな所で戦うつもりか?」
「神木を何に使うんだ」
「お前達が知る必要はない」

以前、プレセアに神木のことを聞いてきたことがあった。
それより前では、オゼットで何やら薪を探していたと聞いている。

「……神木は……通常の薪の数倍以上の火力で燃えるそうです」
「まさか……アイオニトスを溶かすの?」

伝説のアイオニトスをも溶かせる薪を探していた、らしい。
神木の性質と併せて、それに使おうとしてると考えるのが自然か。

「アイオニトスは空想の鉱石だわ」
「……そうだな。そう言われているな」
「もったいぶった言い方じゃねーか」
「気になるのであれば、レイラにでも聞くがいい」

地上には存在してなくても、アイオニトス自体は実在する。確かに、レイラはそれを知っている。だが――
その場から去ろうとするクラトスを呼び止める。

「待てよ!」
「どけ……」
「待てって言ってるだろ」
「時間が経てば経つほど……神子の病気は取り返しがつかないことになる」
「えっ!」

ロイドが動揺した隙に、クラトスは去っていってしまった。

「…………」
「レイラ、アイオニトスのこと、知ってるのか?」
「アイオニトスは、確かに実在するよ。……実際に、見たこともある」
「まさか!?」
「でも、それを溶かすなんて……何に使うつもり……?」

見たこともある。実際に使ったこともある。アイオニトスの実在性は問題にならない。
だが、わざわざ溶かすような使い方は知らない。
アダマンタイトといい、一体、何に使うのか。全く見当がつかなかった。

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