エクスフィア

基地の出入り口ではノイシュが待っていた。

「ノイシュ! お前も来てくれたのか!」
「クーン」
「ちょっとよくって?」

リフィルが拾ってきたボータの剣を示しながら訊く。

「この武器に付いている結晶のようなもの……。これがジーニアスのさっき言っていたエクスフィアというものかしら?」
「そのようだな」

クラトスが答えれば、ロイドが思い出したように問う。

「そういば、あんたもエクスフィアを使ってたな」
「……流石に気付いていたか」
「それに、レイラも出会った時から。ただのアクセサリーって言ってたけど、嘘だよな?」
「……分かってるとは思うけど、装備してる経緯とかは分からないから訊かないでね」

レイラは自分の左手にある宝石がどういうものかはなんとなく理解していたし、それ故に隠していた。

「具体的にはどんなものなの?」
「話が長くなりそうだ。トリエットで話をすることにしよう」

皆はこの場を引き上げ、トリエットへと足を進める。

 *

「……つまり、このエクスフィアは私達の潜在能力を引き出す増幅器なのね」

トリエットの宿でリフィルたちにエクスフィアについての話をした。流石はリフィル。すぐにその性質を理解した。

「私も……使えるだろうか」

そう呟くリフィルの表情が心なしか、陶酔してるように見える。

「難しいだろう。エクスフィアは要の紋がなければ人体に有害なだけだ」
「物に取り付ける分にはいらないから、それにはないみたいですしね……」

クラトスとレイラがやんわりと無理だと告げる。

「要の紋って、作れないのですか?」
「先程話した通り、要の紋というのは抑制鉱石を加工して、表面にエクスフィアを制御するための紋章を刻んだ装備品のことだ。ドワーフの間に伝わる秘術と言われている」
「ああ。そのまじない……というか紋章は、俺にも彫れるんだけど、抑制鉱石の加工は親父にしかできないんだよ」
「ねえ? その抑制鉱石というのはこの中にないのかしら?」

そう言ったリフィルが荷物から色々な物を床に広げる。

「姉さん! これ、家から持ってきたの!?」
「当たり前です。貴重な研究品ですからね。
これがバラクラフ王廟の聖なるツボ、これがマーテル教会聖堂の宝剣、これがアスカード遺跡から出た神官の冠、これはハイマの鉱山から出た黄鉱石……」

あれこれと示していくリフィルにロイドが呆れたように声を上げる

「何だよ、がらくたばっかりじゃん!」
「何ですって……?」

そんなロイドに対しリフィルが詰め寄る。これにはロイドもたじろいだ。

「……ん? これは……」

ふとクラトスがその中からある物を見つけ出し拾い上げる。

「ああ、それは人間牧場の前で拾ったのよ。天使言語が彫られていたから持ち帰ったの」
「先生! これ、要の紋だよ!」

ロイドが即座に気付くも、クラトスが難しい顔をする。

「しかし途中で紋章が擦り切れている。このままでは使えないぞ」

要の紋をクラトスの手からロイドが受け取り、紋章を見る。

「……これぐらいなら俺が直せるよ。大丈夫、明日には先生もエクスフィアを装備できるよ」
「本当!? ありがとう、ロイド! じゃあ悪いけど、お願いするわね」

エクスフィアを使えることとなったリフィルは先程の様子から一転、嬉しそうな笑顔となった。

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