夜の語らい
話もまとまった所で、それぞれに宛てがわれた部屋へと解散した。
レイラはコレットと同室だ。
部屋に入ったレイラは貰ってきた水で布巾を濡らし、右腕に当てる。
ひんやりとした感覚が心地よい。この分なら明日には何事もなく剣を振れるだろう。
一通りの手当が済むと、コレットが声をかけてきた。
「……あのね、レイラ」
「何?」
「今日、レイラは引き返そうって言ったよね。それで戻ったら、ロイドが大変で……」
「そうだった。不思議だよね」
この先の言葉を言うのが不安なのかコレットはどこか思案するように俯くが、やがて続きの言葉を紡ぎ出す。
「私ね、考えたの。ロイドとレイラは何か、つながりみたいなのがあるんじゃないかなって。だからロイドのことが分かって……」
コレットの言葉を聞いてレイラはふぅ、と溜息をつく。
「……変、でしょ?」
「えっ?」
「自分のことも分からないのに、自分じゃない人のことが分かるなんて。変でしょ?」
「そんなことないよ。羨ましいって思うくらいなのに……」
コレットが首を横に振れば、レイラは俯いてしまう。
「コレットはそうでも、私は気持ち悪い。こんなの……羨ましいのなら、そのままあげたいくらい」
「レイラ……」
「……気にしないで。今のは忘れて」
顔を上げたレイラは薄く笑みを浮かべる。コレットにはそれが、どこか悲しそうに見えた。
その夜、レイラは中々寝付けなかった。
ふと、ドアを叩く音が聞こえたかと思うと、ロイドが入ってきた。
「……もう寝てるのか」
「……ロイド」
部屋を出ようとしたロイドを物音で目が覚めたコレットが引き止める。
「……ごめんね。お父様もおばあ様も……私も、ロイドの追放を止められなくて」
「バーカ。お前は悪くないんだから、そんなこと気にしなくていいんだよ。
それに、村をめちゃくちゃにした原因は……俺だから……よ」
コレットはベッドから起き上がり、改めてロイドに向き直る。
「マーブルさんって人のためにも、殺された村の人のためにも、世界再生、がんばるから……」
静かに話を聞いていたレイラ。ふと言いたいことができて、閉じていた目を開き、半身を起こす。
「……失った命は戻ってこない。だからこそ、その人の想いを背負って、戦わなければならない……」
「そうだな……」
「マーブルさんも、村の人たちも……それに、あなたのお母さんも……。たくさんのものを背負う旅だけど……負けないで」
「ありがとな、2人とも……起こして悪かったな」
「ううん、だいじょぶ。お休みなさい」
「お休み、ロイド」
ロイドが部屋から出た後、コレットが呟く。
「ロイドのためにも……がんばるよ……」
再生へ、自らの死への覚悟を募らせるコレット。昨日の不安定さはすっかり形を潜めていた。
その後寝付いたコレットなのだが――
「ピーマン……嫌……」
(何の夢を見てるの……?)
寝言が気になってそれどころじゃない気持ちになってしまった。