ラーセオン渓谷

渓谷を登って、皆に疲れが見え始めた頃ようやく小屋が見えた。
訪ねると、語り部は驚きを表す。

「……人間? それにハーフエルフか?」

ただでさえ滅多にない来訪者が、珍しい組み合わせの集団だ。
しかし、困惑こそするが、追い出されるようなことはなく出迎えてくれた。

「ああ、あんたが語り部だな。マナリーフを分けてほしいんだけど……」
「お願いします」
「長老の証は……持っているな。必要なだけ持って行け……と言いたいのだが……」

杖を見て、語り部は頷くが、言葉を濁す。

「何かまずいのか?」
「少し難しい場所にあるのだ。お前たちが取ってこられるかどうか」

語り部は難しい顔をする。
だが、それくらいが何だ。コレットのためなら、それくらいのリスクで迷うことはない。

「俺さまたち、一応ここまで登ってきたんだぜぇ。どんな場所にあっても何とか取ってくるって。ロイド君が」
「……お前なー」

いい笑顔でゼロスがロイドを見やり、ロイドは呆れる。

「私からも頼みます。教えてください」
「むぅ……分かった。着いて来なさい」

その傍らで、皆で語り部に頼み込むと、折れて案内に出てくれた。

語り部の教えていた洞窟は、滝に分断された先にあり入るだけでも少し手間取った。
ただし、それだけ。いざ洞窟に入れば、マナリーフはすぐそこに生えていた。
案外、思ったほど難しいとは感じなかった。
いざ、採ろうとするが――

「巨大植物……!」

植物の魔物が立ちはだかる。

「番人ってことかよ!」

マナリーフを採るにはこれを退けなくては。

手こずりつつも、どうにか撃退はできた。

「『難しい場所』の本当の理由はこれのことだったようね」

あのような番人が待ち構えていては、確かに語り部が止めようとするのも仕方ない。
長い間、人の世界にこの霊草が出てこなかったのもこのためだっただろう。

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