再び、救いの塔へ

「何だか思い出しちゃうな。世界再生の旅のこと」

救いの塔に来て、コレットが感慨深く呟く。
前にここに来た時、コレットを犠牲にするためだった。

「今度はお前の病気を治すために来たんだ。前とは違うよ」

今ここにいるのはコレットを犠牲にしないため。目的が正反対だ。

「また、ここに来るなんて……」

やっぱり、ずっといた場所なのに帰ってきたという気持ちはない。
むしろ、ゼロスがいる以上、ここに来ていることはクルシスにも漏れている筈だ。敵の本拠地に警戒を、という気持ちの方が強い。

足を踏み入れて、誰もが驚く。
レイラにとっては予め分かっていたことだ。だが、それでもここは気分が悪くなる。
おびただしい数の棺。その数は、4000年の間、犠牲になってきた神子の数と同じと思うと。

「う……っ」
「なんと醜悪な……」
「……なんて悲しい場所なの」

初めて足を踏み入れた者は、棺に気を害する。
そして、前にここに来た者は、この光景に困惑する。

「いやそんなことより、ここは本当にテセアラだよな」
「そう……そうだよ! シルヴァラントの救いの塔と全く同じじゃないか」
「体が……震える。ここ、同じだよ!」
「ばかな!」

シルヴァラントの救いの塔と同じ光景であることに。
リフィルが祭壇を見回して、あることに気づく。

「ロイド。これに見覚えはなくて」

リフィルが指し示したのは、崩れた柱。

「……これは! 俺がつけた傷だ!」

心当たりがあるようだ。これこそが、ここが同じ場所である証拠。

「……2つの世界はここで繋がっている。だから、どちらからここに来ても同じ。救いの塔は1つしかないから」

入り口が2つあるのと近い状態なのだ、ここは。
レイラにとって当たり前のことという感覚が強く、教えておくことを失念してしまった。
祭壇を見やると、やっぱり、ロイドたちを待ち構える姿があった。

「……クラトス……さん……」
「またあんたか……。あんたは一体何者なんだ? 本当に、4000年前の勇者ミトスの……仲間なのか?」
「……分かっているなら話は早い。神子にはデリス・カーラーンへ来てもらわねばならん」
「まだそんなことを言うのか! 世界を歪めてまで、どうしてマーテルを生き返らせようとするんだ!」

問いかけるが、クラトスは言葉ではなく剣を向ける。

「語る必要はない」
「……あんたはやっぱり、俺たちの敵なんだな! もしかしたらって……思ってたのに!」

イセリア牧場で共に戦って、助言を残してくれて。でもそれはクルシスのためで、ロイドたちのためではなかったのだろう。

「今更何を言うのだ」
「今度は、手を抜くなよ!!」

もはや敵だとロイドは割り切り、剣を抜いた。
目の前の人は敵であると、いくら思っても、レイラはいつまでも剣が抜けなかった。
すぐそこでロイドたちが戦っていても、剣を抜けず、魔術の詠唱もできず、立ち竦んでしまう。

「駄目……戦えない……」

無抵抗のレイラに狙いを定められて、目の前で剣を向かれても尚、防ぐための剣すら抜けなかった。

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