軟禁
戦いの傍ら、天使たちがみんなを取り囲んでいた。
レイラへと剣が振り下ろされようとしたその直後、戦いの手は止められ、ウィルガイアへ連行されてしまった。
そして、レイラはひとり、自室に軟禁されていた。
「……やっぱり、開かないか……」
ダメ元で、ここから出られないかと試すが、扉はうんともすんとも言わない。
皆は無事なのか、そればかり気になって、扉が恨めしくなってくる。
不意に、扉が開かれる、とうとう処刑でもされるのかと身構えた、が。
「レイラ! ここにいたんだな!」
「え、ロ、ロイド!?」
扉を開けたのは天使ではなくロイドたちだった。
他のみんなも勢揃いしていて、レイラだけが分けられていたようだ。
「どうやってここに?」
「俺たちみんな、牢屋に入れられてたけど脱出して、レイラを捜してここに――」
「あ、いや、そうじゃなくて、鍵……」
「牢屋の鍵のことなら……」
「牢屋じゃなくて、この部屋の鍵! 鍵かかってたのにどうやって開けたの?」
今度はロイドが困惑する。
「鍵なんてなかったぞ?」
「え? 私がここから出ようとしても出られなかったのに……?」
お互い、ハテナを浮かべる。
「勘違いじゃないか?」
「何度も開けようと試したから間違いない筈だけど」
内側からは開けられないようにして、外側からは開けられるようにしたのだろうか。わざわざそんなことをする意味が分からない。
「とにかく、無事でよかった。早くここから出よう」
「マナの欠片は?」
「ばっちり、貰ってきたぜ」
自信満々に見せてきた代物は、確かにマナの欠片だ。
コレットを天使と、リフィルやジーニアスをディザイアンだと誤魔化せばこの町を歩くことはできるだろうが、天使と交渉しようとなると話は変わる。
「身分証明書もないのに、どうやって!?」
「そこは、何とかごまかして……」
一体天使をどうやって言いくるめたのだろう。気になって仕方ない。
「でも、レイラがいたらすぐにマナの欠片が貰えたかもしれなかったな」
「無理だと思う。そりゃ、私なら顔パスでもいけたけど、今は逆にそのせいで嘘があっという間にバレるだろうから」
レイラがいると恐らく誤魔化すことすらできなかっただろう。レイラは良くも悪くも天使たちにとって注目の人物だ。裏切りのことは恐らく知れ渡っている。そのレイラが一緒に交渉してしまおうものなら、たちまち牢屋戻りだ。
何故レイラだけをわざわざ別で軟禁したのかは分からないが、結果的にそれが功を奏した。
「何はともあれ、もう用は済んだんだね。それじゃ、早く逃げようか」
「ああ。バレる前に急ごう」
部屋を出る前に、部屋を振り返る。3年間不在にしていても、裏切っても、特に手を付けられることなく放置されていた部屋。
この部屋は、クルシスでレイラがどういう立ち位置に置かれていたのかを表している。形ばかりは丁重に扱われていたが、それだけ。居ても居なくても何もなく、そこにいただけの存在。
「さようなら……」
まるで自分の分身のような、その部屋に別れを告げた。