ミトスの正体
「……ミトス?」
温厚な少年とは打って変わった、悪意に満ちた表情と言葉でこちらを見やってくる。
そのまま、魔術をレネゲードに、最後にユアンに撃ち込む。
「ボクが気付いてないとでも思った? 残念だったね。クラトスにはプロネーマを監視に付けてたんだ。ロイド達に情報を流していたみたいだからね」
「くそっ……っ! ユグドラシル! お前がどうしてここに……」
「な、何……っ!?」
ユアンが、ミトスを「ユグドラシル」と呼ぶ。それは、ミトスがクルシスの首謀者と同一人物、だという意味を持ってしまう。
「中々面白い趣向だったよ。ボクの邪魔ばかりする薄汚いレネゲードが、お前だなんてさ。本当なら殺すところだけど、姉さまに免じて命だけは助けてあげるよ」
ユアンを侮蔑し、高笑いしながら蹴り飛ばす。
あの、ミトスがこのようなことをするだなんて。温厚な少年の面影はどこにも無い。
「や、やめろ! お前一体……」
流石にこの騒ぎで、残りの全員も目を覚まし駆け付けてきた。
「どうしたんじゃ……!」
皆、この光景に困惑する。そんな中、ジーニアスは。
「ミトス……っ! ……やっぱり……」
「……やっぱり? やっぱり信用できなかった? 正解だね、ジーニアス。ボクもお前なんか信じてなかったよ!」
今までの態度は全て演技だったと言わんばかりに、仲間に――プレセアに魔術を向ける。
「きゃ……っ!」
「うおおおおお!」
アルテスタが割り込み、ミトスの魔術を受けてしまった。
タバサは、悲痛な声で訴えかける。
「ミトスサんは……私を……助けてくれまシた」
「う……うるさいっ!」
タバサにも、魔術を放ってしまう。
「ミトス……タスケテクレ……マシタ……ミト……ス……」
タバサは壊れて、同じ言葉を繰り返し、そして止まってしまった。
「何てことを……! あなたは自分を犠牲にしてタバサを護ったのに!」
「どうして! ミトス! どうしてだよ。何でタバサやアルテスタさんを傷付けるのさ! あんなに仲良くしてたじゃない!」
一緒に平穏に暮らしていたのに、平気で傷付けることができるだなんて。
「タバサ! 不気味なほどボクの姉さまに生き写しのあの人形! ずっと気に入らなかった! あいつは姉さまの心を受け止めきれなかった、出来損ないの器だ! 見るだけで反吐が出る!」
器になれなかったからと、このようなことをしていい筈がない。失敗したから棄てられて、ついには壊されて、あまりに残酷すぎる。
「……このクソガキが! 俺の親友を裏切りやがって!」
「ロイドやめて!」
ロイドに斬りかかられて、ミトスが踞ってしまう。
「ダメだよ! 2人ともボクの友達なんだから!」
ジーニアスがそれを止める。裏切られても、まだ友達だと、まだ信じているのだ。
だが、プロネーマが駆け付けてくる。
「ユグドラシル様、まだ傷が癒えておらぬのでしょう!」
「……分かった」
ミトスは、ユグドラシルのものへとその姿を変えた。
そしてミトスとプロネーマ、そして気を失ったままのクラトスは姿を消してしまった。
『死ぬための命なんてあっちゃいけないだと? 自分が付けているそのエクスフィアが何なのか、冷静に考えてみるといい』
最後に、それだけ残していった。